[458] 『暗黒の1つめ戦争』開戦! 投稿者:阿僧祇 投稿日:03/05/02(Fri) 06:46


テロップ「このビデオは、証言を元に事件を再現した映像です。」

   ずずん!

テロップ「横浜のマンション」


 表札には「成瀬」とある。
 中には引っ越し業者のダンボール箱がまだ残っているが、ほぼ整理終了している。

 台所…
 必死で「ぶっち〜の簡単おもてなしレシピ」(自費出版・著者笹渕愛・非売品)を読みながらフライパンを振ったり鍋の火を調節したり野菜を切ったりとおおわらわな綾瀬。

 そして出来あがった順にリビングに運ぶ。

 リビング…

 テーブルを囲んで座るこの部屋の主でDIA・JAPAN専属医師成瀬幸弘、
 成瀬の遠い親戚にして綾瀬の教え子勝田智宏、
 綾瀬の善女時代の同期生でいまでも親交が深い一碧なつみ、
 言わずと知れた綾瀬の妹分にしてパートナー笹渕愛。

成瀬医師「いや、今日はみんなが手伝ってくれて助かったよ。まあ、大した物も用意出来ないけど…たくさん食べて飲んで行ってよ。」
笹渕愛「頂きます〜…もぐもぐ」
勝田智宏「あ、なつみちゃん…ジュース空だね…」
一碧なつみ「そんな…自分で出来ますよぅ…勝田君のほうも空じゃないですかぁ」
成瀬医師「おい、友美〜! もうこっちで一緒に食べないとなくなるぞ〜!」

 皿を4枚持ってリビングにやってくる綾瀬

綾瀬友美「一緒に食べられるわけないでしょう!作る傍からなくなってくんだし!」
勝田智宏「あ…先生すいません…遠慮しないでつい…」
綾瀬友美「いや、勝田くんは良いのよ。忙しいところをわざわざ手伝ってくれたんだから。あなたはどんどん食べてね。」
一碧なつみ「綾ママはああ言ってるから…ドンドン食べよ〜…もぐもぐ」
笹渕愛「そうそう…もぐもぐ」
綾瀬友美「あなたたちはひとのアルバムだの成績票だのひっくり返してみてただけでしょ!」
一碧なつみ「でもその後はちゃんと手伝ったじゃないですかぁ〜…もぐもぐ」
笹渕愛「そうよ〜。手伝ったじゃない〜…もぐもぐ」
綾瀬友美「それは私が言ったから始めたんでしょう!」
成瀬医師「まぁまぁ…友美、今日は折角手伝ってくれたんだからそう言うなよ。友美も座って座って…」
綾瀬友美「でもまた持ってこなきゃ…料理がぜんぜん足りてないわ…」

 再び台所に行き料理を運ぶ綾瀬。

綾瀬友美「はい、今度は蟹のグラタンに、フライの盛り合わせに、海老ピラフよ〜」
成瀬医師「グラタンかぁ〜…良いねぇ…」
勝田智宏「そろそろご飯が欲しかったんですよ〜…もぐもぐ」
一碧なつみ「にゅふふ〜…フライさんフライさん〜…もぐもぐ」
笹渕愛「友美がまともな料理作れるようになって愛ちゃん嬉しいです〜…もぐもぐ」
綾瀬友美「それはどうも!(怒)…全く…まだ足りないかな…」

 そのとき!!

 ぴんぽぉ〜ん。

成瀬医師「ん?」
綾瀬友美「誰だろ?」
成瀬医師「お隣にはもう挨拶したし…」
一碧なつみ「新聞の勧誘とか。もぐもぐ。」
勝田智宏「N●Kの請求とか。もぐもぐ。」
笹渕愛「立ち退きの要求とか。もぐもぐ。」
綾瀬友美「引っ越してその日に立ち退かされてたまるもんですか!」

 ぴんぽぉ〜ん。

綾瀬友美「はーい、いま出ま〜す! 愛、ちょっと行ってきてくれない?」
笹渕愛「え〜? なんであたし…もぐもぐ。」
綾瀬友美「私はいま、手が離せないでしょう! あんたは食べてるだけなんだから…」
笹渕愛「やだ〜。もぐもぐ…」
勝田智宏「僕が行ってきます。」
綾瀬友美「そんな…このうえにまだ雑用までなんて、悪いわ」

 ぴんぽぉ〜ん!

笹渕愛「ほら、早くしないと。もぐもぐ」
綾瀬友美「愛が言うか!」
勝田智宏「行きます、行きます。はぁ〜い、今出ます!」

 とんとんとんとんとん…がちゃ。

勝田智宏「あれ? 西町さん?」
西町珠理「あ、勝田くん…(なぜか赤面)、来てたんだ。綾瀬さんは?」
勝田智宏「いますよ。綾瀬先生〜、西町選手です〜!」
綾瀬友美「え! 上がってもらって上がってもらって!」

 部屋に入ってくる珠理。

笹渕愛「いらっしゃーい!」
綾瀬友美「こんばんは〜、西町さん」
一碧なつみ「いつ帰国したんですか?」
西町珠理「どうも御無沙汰しまして…ちょうど近くまできたものですから。お引越し、おめでとうございます。これはほんのおしるしですが。(とおみやげを渡す)」
綾瀬友美「まあまあ、ありがとうございます。とにかく座ってください。」
成瀬医師「いま、みんなでお祝いしてたところなんですよ」
西町珠理「いいえ、どうぞみなさんで。私はご挨拶に来ただけですから、これでおいとま…」
綾瀬友美「そんなこと言わず。さあ、さあ。」
勝田智宏「椅子持ってきました。」
一碧なつみ「はい、おはしとコップと取り皿です。」
成瀬医師「さあ、どうぞどうぞ〜。」
西町珠理「そ…それじゃ、せっかくですから…」

 珠理、何故か勝田くんの隣に椅子を置いて座ってしまう。
 一碧はふと嫌な予感を感じたが、軽く頭を振って無視した。

笹渕愛「はい、かけつけ三杯!」
西町珠理「あっ、だめです、私は三禁が…」
笹渕愛「信戦組はもうないですよ?」
西町珠理「え・・・・」
笹渕愛「あ・・・・」

 西町が沈んでしまい、少し気まずい空気が。

一碧なつみ「えっと…(汗)」
勝田智宏「そ、そうそう、アメリカはどうでした? アメリカでは太陽が西から昇るって本当ですか?」
西町珠理「!? そんな馬鹿なこと、あるわけないでしょ!」

 勝田くんの機転でようやく笑いが戻り、明るい食卓となる。
 しかし…一碧は気づいた。珠理が、主に勝田くんとばかり楽しそうに喋ってることに。

一碧なつみ「(フォークをくわえたまま)…むぅ〜〜〜」
笹渕愛「どうしたの、なつみちゃん?」
一碧なつみ「なんでもありません!」

 もうれつな勢いで野菜サラダをかっ込み始める一碧。
 その様子を見ていた綾瀬と成瀬医師、顔を見合わせて訳知り笑い。

笹渕愛「?」

 一同を見回して疑問顔の笹渕。
 そのとき!!

 ぴんぽぉ〜ん。

綾瀬友美「はーい…愛、こんどはアンタが出て。」
笹渕愛「なんであたしが…もぐもぐ」
勝田智宏「あ、行きます行きます。」
綾瀬友美「勝田くんは食べてていいから!」
勝田智宏「そ、そうですか…?」
一碧なつみ「・・・・・・・(視線は勝田くんに向けながらがつがつがつがつ)」
綾瀬友美「愛、おねがい」
笹渕愛「は〜い。ぶっち〜が行ってきまーす。」

 とんとんとんとんとん

笹渕愛「はーい、どちらさま…」

 …がちゃ。

笹渕愛「です…か…」

 そこにいたのは…

 狐のような目のデザインの、茶色い覆面をした女が5人だった。

笹渕愛「な、なんですか、あなたたちは!?」

 五人、顔を見合わせると、中の一人がスプレーを取り出して笹渕の顔に噴きかける。

笹渕愛「あ…」

 そのまま脱力して倒れてしまう笹渕。

綾瀬友美「ちょっと、愛? どうしたの?」

 部屋の中へばたばたとやってくる覆面の一団。

一碧なつみ「きゃあああっ!?(口から飛び散るレタスの破片)」
西町珠理「な、なに!?」
 思わず一碧と珠理をかばう位置に立つ勝田智宏。

綾瀬友美「な、なんですか、一体!」
成瀬医師「誰だ君たちは!」

 覆面女の一人が、成瀬医師の顔を爪でしゅっと引っかく。

成瀬医師「うっ…!」

 体を痙攣させ、その場に倒れてしまう成瀬医師。

勝田智宏「なっ…毒爪!?」

 続いて一碧に近づこうとする、細い三つ編み垂らした覆面女。
 一碧に抱き着き守ろうとする西町。
 その前に立って二人を守ろうとする智宏。

 背の高いしずかちゃん髪の覆面女が同じように爪で引っかこうとする
 が、智宏はとっさに、側にあったアルミ皿をぶつけて手を弾き飛ばす。
 次に突き進んできた、細い三つ編み垂らした覆面女の胸倉を掴んでむ智宏。
 が、った瞬間、シャツがビリビリっと破れて、胸パットがずれ落ち、
 薄っぺらい胸が…

細い三つ編み垂らした覆面女「きっ、きゃあああああっ!!(泣)」
勝田智宏「あっ…(赤面)…ごめんなさい!(思わず手を放す)」
背の高いしずかちゃん髪の覆面女「サトミ先輩!?」
 その瞬間、小柄で頭に包帯を巻いた覆面女がフライパンで智宏の頭を一撃。

勝田智宏「ぐぅぅぅぅ…」

 その場に崩れてしまう智宏。

細い三つ編み垂らした覆面女「(慌てて前を隠し…)はあっ、はあっ、はあっ…マサヤはんにも一度しか見せてないのにぃっ!!(泣き声)」
おかっぱの黒髪の覆面女「なんでフロントホックのBカップなんか着けてきたんですか!」
背の高いしずかちゃん髪の覆面女「サトミ先輩には大きすぎ…」
細い三つ編み垂らした覆面女「だ、だって、ウチにもミエってもんが、、、(泣)」
小柄で頭に包帯を巻いた覆面女「どうでもいいから! 早く智にいちゃんを!!」

一碧なつみ「智宏くん!」
西町珠理「勝田くん!」

小柄で頭に包帯を巻いた覆面女「早く!」
他の覆面女たち「OK!」

 覆面の一団、智宏を運んで出て行こうとする。

綾瀬友美「待ちなさいっ!」

 後を追う綾瀬。だが、玄関に行こうとしたところで

 ぱんぱんぱんぱんぱーん!!

綾瀬友美「あっ!?」

 連続した爆発音とともにもうもうと広がる煙幕。

綾瀬友美「ごほっ、ごほっ、ごほっ…」

 遠ざかっていく車の音。

 やがて煙が張れてくる。

一碧なつみ「智宏くんは、智宏くんは!?」
綾瀬友美「ご、ごめん…!」
一碧なつみ「そ、そんなぁ!(涙)」

 笹渕を助け起こす綾瀬。

笹渕愛「…う〜ん…もう食べられません…(寝言)」

綾瀬友美「眠らされてるだけね。」
 綾瀬、笹渕を背にして部屋に戻ると、ソファに寝かせ、成瀬医師を看る。

一碧なつみ「はっ!? 警察に電話!」
 受話器をとる一碧。
 そのとき!!

 ぴんぽぉ〜ん。

 顔を見合わせる綾瀬・一碧・西町。



 がちゃっ。

配達員「こんばんは〜、宅急…うわあっ!?」

 消火器で殴りかかる寸前だった西町、
 掃除機を投げつける寸前だった一碧、
 扇風機を叩きつける寸前だった綾瀬。

配達員「あっ、あのっ、おとどけものですっ!(汗)」

綾瀬友美「あっ、すみませんっ! サ、サインでいいですか!?」

 封筒を受け取って部屋へ戻る三人。

綾瀬友美「…中身は…ビデオテープ?」
一碧なつみ「こんな時にそんなものどうでも…」
綾瀬友美「まって。この差出人は…」

 差出人名義。そこにはこう書かれていた。
 『秘密結社・暗黒の1つめ』


================================
  オープニングテーマ『銀の地平線』("Nails"より)

 ♪銀の地平線 伝えてよ この想い
  遠くに離れた あなたの声 掴めないけれど
    いつの日にか めぐり会い 二人の誓い 呼び覚まして
    高鳴る 私の この胸に… 響け 届け!

    やがて 押しよせる風に 心の翼 はためかせて
    飛び立つ 我らの この胸に… 響け 届け!

              (*ネタがわかった人だけ笑って下さい(苦))
===================================

 笹渕愛と成瀬医師を寝室に休ませ、急ぎビデオを見る3人。


頭に包帯を巻いた覆面女(脅迫ビデオ)『智にい…もとい、勝田くんの身柄は我々、秘密結社・暗黒の1つめが預かりました。満月の晩には我々の生け贄となるでしょう! ただし、そちらにもチャンスを与えます。次の満月の晩、つまり5月16日までに、こちらから送り込む刺客をすべて、綾瀬先…もとい、綾瀬友美が倒すこと。セコンドとして1人のみ、助っ人を認めます。』

 前髪をいじりながら画面を睨みつけてる綾瀬友美。
 溜息をつきながらも、一言も聞き漏らさないように耳をそばだてている西町珠理。
 そして、まばたきもせず息さえも止めたかのように画面を注視している一碧なつみ。

頭に包帯を巻いた覆面女(脅迫ビデオ)『…そして警察には絶対に届けないこと。この条件のうちひとつでもクリアできなかった場合、勝田くんは満月の晩をもって二度とおムコに行けない体になっちゃうから、そのつもりで。最初の刺客は、5月3日のDIA興行においてマッチメイク済みです。勝てば、次の刺客の待つ場所が分かります。なお、このビデオテープは自動的に…』

 あわててビデオを止める綾瀬。

綾瀬友美「あぶない、あぶない。物入りな今、高価なビデオデッキを壊されてたまるもんですか!」
西町珠理「本格的に誘拐だわ、これは! すぐ警察に…!」
 立ち上がった西町だが、その手を、無表情でモニタを見たのままの一碧が掴んだ。
西町珠理「…なつみちゃん?」
 ようやく振り向いた一碧の目から、ボロボロと大粒の涙が。何か言おうとしてるが、口がぱくぱくと動くだけで言葉にならない。ショックの余り言葉を失ったようだ・

綾瀬友美「そうね。警察に届けないことが条件に入ってるし、ここは電話しない方が。」
西町珠理「でも…」
綾瀬友美「要するにアレでしょ。刺客とやらと試合して、全部勝てば、勝田くんは無事に帰してくれるってことでしょう?」
西町珠理「そう言ってますけど…」
綾瀬友美「なら、やってやろうじゃないの。これは私に対する挑戦。受けて立つだけよ!!」
西町珠理「そうですか…」
綾瀬友美「って、セコンドを1人だけ認めるって言ってるわね。愛はあんな状態だから巻き込みたくないし…誰にしよう?」
西町珠理「それじゃ、私が…」

 そのとたん、ガタン!と椅子を倒して一碧なつみが立ち上がった。
 二人が驚いているうちに、一碧はめらめらと燃え上がる怒りの炎を目に、

一碧なつみ「さあ、行きますよ!」

 と綾瀬の腕を引っ張って外へ行こうと。

綾瀬友美「ちょ、ちょっと! どこ行くのよ!?」
一碧なつみ「DIAの会場! 智宏君を取り戻すんです! いますぐ!!」
綾瀬友美「いますぐは無理だってば!」
西町珠理「試合は明後日よ!?」
一碧なつみ「あ…!」

 ようやく我に返ったなつみ。

一碧なつみ「…綾瀬さん。明後日の試合、絶対勝ちましょう! 刺客なんか、叩き潰してメッタメタにしてやりましょう! 私がセコンドにつきます!!!!!!!!」
綾瀬友美「は、はい。(迫力に押されてる)」
一碧なつみ「うぉぉぉぉっ!!」
 バシバシバシバシッ! 怒りのあまり、ソファーにエルボーとキックのラッシュ。
綾瀬友美「…いいけど、壊さないように。」
西町珠理「どうやら、セコンドは決まったようね。」

 かくして、勝田智宏をめぐる『暗黒の1つめ戦争』の幕が切って落とされたのであった!!


[*このエピソードは、森中さんのご協力でねいさんと合作しました。]

[469] 『暗黒の1つめ』第2の刺客! 投稿者:阿僧祇 投稿日:03/05/08(Thu) 21:10
2003/05/05
 5月3日、宮城県でのDIA興行において第一の刺客を撃退し、その夜のうちに旅立ったこの二人。
 二日後、5月5日の夜には、長野県安曇郡南小谷の近くにある、栂池(つがいけ)まで来ていた。

 長野県の松本から新潟県の糸魚川へ抜ける単線のローカル線「大糸線」に揺られて数時間の南小谷。そこからさらにバスで一時間。
 ここ栂池高原はスキー場として有名であり、それぞれ3km/4kmあるふたつのコースに沿って数多くのゲレンデが配置され、シーズンには春スキーの客でにぎわう。そして5月になっても上部にはまだゲレンデスキーを楽しめる雪が残っていて、ゴールデンウィークといえどもまだスキー客・スノボ客が来ていた。
 そんな広いスキー場の、一番下の初級者用ゲレンデ「鐘の鳴る丘」。ここはかつて、同名のラシオドラマの舞台となった場所と伝えられる。長短10本以上のリフトがゲレンデを縦断し、視界の彼方まで鉄塔が散在する、広大なゲレンデだ。 
 とはいえ、春先までナイタースキーでにぎわう『鐘の鳴る丘』もすでにシーズンオフ。大地は青々とした草に覆われ、巨大な照明スタンドも闇の中にそびえ立つだけで、わずかにところどころ融け残った残雪が星明かりに浮かんでるだけの、草っ原の斜面に過ぎなかった。リフトもロープを外され、ゴンドラの椅子が積まれている。

 そんな、シーズンオフの夜の初級者用ゲレンデを歩く、女子プロレスラーの2人づれ。


一碧なつみ「やっぱり山へ来ると星がきれいですね〜!」
綾瀬友美「空気が澄んでるし、近くに町の灯りがないからね。来てよかったかな?」
一碧なつみ「ええもう。こんな星空、久しぶりで…でも交通費はどこかから出るんでしょうか? 長旅をかけて、実は自腹だなんて言われたらたまりません。」
綾瀬友美「あんまり期待しない方がいいと思うけど…」
一碧なつみ「それにしても、本当ににここでいいんですか? 誰もいないですよ。しかも、真っ暗だし…」
綾瀬友美「控え室に置いてあった手紙では間違いなく、この時間とこの場所が指定されてたんだけど…。」
一碧なつみ「まさか、星空の散歩の為だけに呼んだとは思えませんけど…」

   その瞬間であった。
   ナイター設備に電源が入り、ゲレンデ全体が三種類の光でじわぁ〜と明るくなっていく。

綾瀬友美「あら、きれい…」
一碧なつみ「見てください、影が虹みたいな色に別れてますよ〜☆」
綾瀬友美「あいつ(成瀬医師)と来てたらちょっとはロマンチックだったかな☆」
一碧なつみ「ううっ…智宏くん、早く帰ってきてよぅ…一緒に散歩したいよぅ…(うっすらと涙)」

   会話はのんびりしているが、目は油断なく周囲に配っている。

   いた!
   ライトを背に、腕を組んでこちらを見下ろしている2人組のシルエットが。
   そのとたん、BGMとともに、スピーカーから声が流れてきた。

BGM『♪銀の地平線〜 伝えてよこの想い  遠くに離れたあなたの声 掴めないけれど〜…(「銀の地平線」"Nails"より)』
頭に包帯を巻いた覆面女の声(長いな(汗))「綾瀬先生…じゃなくて、綾瀬友美! それに、おまけの一碧なつみ! よく来た!」

一碧なつみ「おまけじゃないもん!」

頭に包帯を巻いた覆面女の声(だから長いってば(汗))「じゃあ、おばけの一碧なつみ。」

一碧なつみ「おばけじゃないもん!!!」

頭に包帯を巻いた覆面女の声(長いってんだからなんとかしろよ(汗))「えーと、じゃあ、えーと、おのろけの一碧なつみ?」

一碧なつみ「う・・・・・(汗)」

 これは否定できなかったようだ。(笑)

頭に包帯を巻いた覆面女の声(…わかったわかった、もう諦める(汗))「第二試合はここ、『鐘の鳴る丘』で行う。形式はプロレスのタッグマッチ。ゲレンデの外へ出たらリングアウトとする。」

綾瀬友美「ここで野試合ってこと?」
一碧なつみ「な〜んて広いリングでしょう(汗)」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「では〜、ただいまから本日のメインイベント、タッグマッチ時間無制限一本勝負を開始します。まずは赤っコーナー…」
BGM『♪I was looking for some dreams くだらない優越感 ただそれだけの為に 走ってきたのか…(「CLIMAX」奥井雅美)』  

綾瀬友美「ご丁寧に私の入場テーマまで…(汗)」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「赤っコーナー、DIA−JAPAN所属〜、綾瀬友〜美〜!」

綾瀬友美「いくぞっ!」
 観客もいないのに、思わず上着をバッと脱ぎ捨てリンコス姿でポーズを取る綾瀬。(笑)

頭に包帯を巻いた覆面女の声「おなじく、プロフェッショナルレスリングREAL所属、一碧なつ〜み〜!」

一碧なつみ「がんばりまーすっ!」
 つられて、やはりリンコス姿となりカメラ目線で手なんか振ってる一碧。(笑)

頭に包帯を巻いた覆面女の声(長いってんだからなんとかしろよ(汗))「青コーナー、所属不明・正体不明、秘密結社・暗黒の1つめ〜、刺客〜1〜号〜! おなじく、刺客〜2号〜!!」

 狐のような目の覆面をした二人組が、順に気合もたっぷりに、草に覆われたゲレンデに歩を進める。
 覆面レスラーゆえ、入場テーマが「ミス・ホワイトに口づけを」("はぷにんぐJorney")と「アン・ドゥ・トロゥ」(キャンディーズ)だからといって正体を詮索してはいけない。

刺客1号(白いリンコスにオープンフィンガーグローブ)「おっし、やったるで! いくわよ、ノリコちゃん!」
刺客2号(橙色のリンコス)「サトミ先輩、名前を呼んだらバレるじゃないですか。」

 もちろんリンコスや会話から正体を詮索してもいけない。(汗)

頭に包帯を巻いた覆面女「レフリーは不肖、勝田佐・・・じゃなくて、正体内緒のわたくしがつとめさせていただきます。では、バッディングはしないように。サミングは反則。凶器は20カウントまで…」

 説明が続くあいだ、ライトアップされただだっぴろい緩斜面の真ん中でにらみ合う4人。

頭に包帯を巻いた覆面女「では…ファィッ!」

 カーン!

一碧なつみ「…智宏くんを返せえっ!」

 おおっ、いきなり!?
 一碧なつみ、すばやく刺客1号の頭に掴み掛かると、ヘッドロックを極め、草を蹴って飛ぶように疾走、その先にあったリフトの柱へ…なんと鉄柱攻撃!?

 がぁぁぁ・・・んんんんん・・・・・・。

 夜のゲレンデに、豪快な金属質の音が響き渡った。

一碧なつみ「返せっ! 返せっ! かぁ、えぇ、せーーーっ!」

 がぁんっ、がぁんっ、が、あ、あーーーんっ!
 早くもマスクに血が滲んでる。

 戦うのも忘れて、呆然とそれを見ている綾瀬友美と刺客2号。

刺客1号「い、痛いやんかーっ!!(噴水涙)」

 必死にヘッドロックを外した刺客1号の、強烈な掌底!
 後ろへふっとんで尻餅をつく一碧なつみ。
 そのまま掴み掛かる刺客1号。
 ライトアップされた草の上で、はげしい寝技の取り合いが始まった。

綾瀬友美「…はっ! アシスト、アシスト。」
刺客ニ号「あっ、そうでした!」

 あわてて救援にかけつけようとする綾瀬友美と刺客2号。

頭に包帯を巻いた覆面女「はい、だめだめ。コーナーに戻って。」
綾瀬友美「なっ、なんで私だけ止めるのよ! だいたいコーナーって何百メートル先にあると思ってるの!」

 もうちょっとでアームロックに入れるところだった一碧なつみだが、刺客2号に引き離されてしまう。

刺客2号「あなたを葬るためにわざわざビデオで研究してきた技です!」
一碧なつみ「嘘ぉぉぉ!?」

 技に入る前のあのアピールは…出たあ、浜岡奈々緒・アトミックジャーマン!
 どさっ、と鈍い音とともに、草っ原へ一碧の後頭部が落下する。

綾瀬友美「なつみちゃんっ!」

 だがレフリーに阻まれかけつけられない。
 その間にも、カバーに行く刺客2号。
 なんと、刺客1号がカウントを始めた。

頭に包帯を巻いた覆面女「待った待った、カウントは私の役目!」

 そんなやり取りの間になんとか肩を上げる一碧なつみ。

一碧なつみ「つぅぅぅ、地べたへのジャーマンは、効く…」

 その間にも刺客1号とタッチする刺客2号。
 立ち上がった一碧なつみはロープへ飛…ぼうとしたがロープなんかないので勢い余って背中から斜面にすっ転んだ。
 すかさず飛び掛かる刺客2号。
 しかし、一碧なつみ、寝転がった状態からのカウンターキック!
 刺客2号は、巴投げのような感じに一回転して草の中へ落下した。
 すかさず立ち上がった一碧なつみ、刺客2号のバックをとり

一碧なつみ「月にかわって、仕返しよ!」
刺客2号「嘘ぉぉぉ!?」

 刺客2号、さきほどの一碧とまるで同じ悲鳴と同じやられ方でジャーマン葬!
 なにもやられ方までモノマネしなくていいのに…。
 一気にグロッキーになった刺客2号に、余裕を得た一碧なつみ、得意の脇固めを入れる!

 もはやギブアップは時間の問題か?と思われたが、そこへ突進してきた刺客1号。
 寝技に入ってる一碧なつみに蹴り、蹴り! しかもレフリーはよそ見してる!(爆)
 ついに脇固めを外してしまった一碧なつみ。
 立ち上がるなりリバースネルソンに捕らえる刺客2号。
 そこへ…出たあ、噂のラブレター・ショットぉ! 膝で溜めたスピンの勢いで掌底が顎を捕らえる! またもレフリーはよそ見!(爆)
 今度は一碧なつみが脱力状態となった。

刺客2号「サトミ先輩、フォール、フォール!」
刺客1号「おっしゃあ! これで初勝利や!」

 そういや里見ちゃんて、試合で勝ったことって一度もなかったんだっけ…(汗)

頭に包帯を巻いた覆面女「1…2…」

 そこへ、綾瀬友美が駆け込んでくる。
 抱えてるのは…ペアリフトの椅子!?

綾瀬友美「それぇっ!」
 ぶーんっ!
刺客1号「うあぁっ、危のうおますがな!(涙)」
 鉄パイプで補強された頑丈なゴンドラ椅子が風を切る。
 綾瀬友美の最終兵器、必殺の椅子攻撃だ!!(爆)
 マジに恐怖を感じて飛び下がる刺客1号。そら恐いわな。(汗)

綾瀬友美「あんたたちっ(ぶーんっ!)、いいかげんに(ぶんっ!)、しなさい!(ぶんっ)」
頭に包帯を巻いた覆面女「凶器、凶器! 反則です。1、2、3、4…」
綾瀬友美「うるさいっ! 内申書に響くわよ!?」
頭に包帯を巻いた覆面女「ひっ! ごめんなさい先生!(涙)」

 これでレフリーは引き下がり、またまたよそ見!(爆)
 刺客1号に続いて、刺客2号を追い掛け回す綾瀬友美。
 恐怖のあまり、悲鳴を上げながら斜面を駆け上って逃げる刺客2号。

 その間に、体勢を整えた一碧なつみは、刺客1号にローキック連打、バランスのくずれに付け込んでアームホイップ!
 そのまま草の上を転がりながら関節を取ろうとする!
 必死に抵抗する刺客1号。
 絡み付きながら、緩い斜面をゴロゴロ転がり落ちていくふたり。

綾瀬友美「待ちなさいっ!」
刺客2号「ひいいいっ!」

 ペアリフトの椅子が宙を舞う。
 さすがに刺客2号は斜面に伏せてこれを避けたが、椅子はリフトの柱に激突、耳をつんざく金属音が、ライトアップされた草のゲレンデに響き渡った。
 この隙にと飛びついた刺客2号。
 ところが組み技は、柔道出身の綾瀬友美がもっとも得意とするところ。

綾瀬友美「はっ!」

 とっさに首極め式の大外刈りで豪快に跳ね飛ばしてのしかかり、瞬く間もなく腕ひしぎ十字固めに入った。
 これがガッチリ極まる!

刺客2号「あーーーーーっ!! ギブアップ、ギブアーーーップ!」

 カンカンカンカンカー−−ン!

頭に包帯を巻いた覆面女「え〜、ただいまの勝負。時間計り忘れ、腕ひしぎ十字固めにより、綾瀬友美選手の勝利です。」

綾瀬友美「やったあああっ!」

 思わずガッツポーズでアピールする綾瀬友美。

刺客2号「あいたたたた…覆面は動きにくいわ。ところで、里見先輩と一碧先輩は?」

 そのとき、斜面のはるか下の方で、「ばしゃんっ!」という水音が…



一碧なつみ「ぶくぶく、がぼがぼ…!(涙)」
刺客1号「つ、冷てーーーーーっ!(涙)」

 ふたりは雪解けの小川の水溜まりにはまり込んでいた。

一碧なつみ「ぶくぶく、がぼがぼ…!(涙)」
刺客1号「ちょっと、一碧はん、大丈夫や、ここはそんな深うないから…」
一碧なつみ「ぶくぶく、がぼがぼ…!(涙)」
 もがく一碧なつみ、刺客1号のリンコスにしがみつき…
 びりびりびりっ!
刺客1号「ああんっ、駄目っ! 昌哉はんと智宏くん以外には見せたないっ!(涙)」

 斜面を駆け降りて、ようやく駆けつけてきた他の面々。

頭に包帯を巻いた覆面女「だいじょうぶですか!?」
刺客1号「(リンコスの前を抑えて)一碧はんが転んで溺れはった。(汗)」
一碧なつみ「(刺客1号の肩に捕まり)はぁっ、はぁっ、はぁっ、」
 綾瀬友美も肩を貸し、二人を水から上がらせる。
綾瀬友美「ったく。いくらカナヅチでも、こんな膝くらいの深さの水溜まりで溺れる人がいますか!」
刺客1号「落語の『品川心中』みたいやな、一碧はんは(汗)」
一碧なつみ「だってぇ〜(涙)」

刺客2号「えっと、じゃ、これ、次の刺客の場所と時間です。どうぞお納めください。(封筒を差し出す)」
綾瀬友美「あ、どうもご丁寧にありがとうございます。」
刺客2号「いえいえ、それじゃ、次もどうかよろしく。さ、佐和子ちゃん、移動よ。」
頭に包帯を巻いた覆面女「はーいノリコさん。じゃ、綾瀬先生、またね。」
綾瀬友美「またね。」

 かくして友好的に(笑)去っていく『暗黒の1つめ』の刺客たち。

 それを見送る綾瀬友美と、その肩にささえられてる一碧なつみ。

一碧なつみ「はあっ、はあっ、はあっ…」
綾瀬友美「大丈夫、なつみちゃん?」
一碧なつみ「はぁっ、はぁっ、はぁっ…あ、あのですね、綾瀬さん。」
綾瀬友美「なに?」
一碧なつみ「あの刺客の人、ちょっと気になること言ったんですけどっ…(涙っ)」


 …つづく

  ▼時間無制限1本勝負
  ○綾瀬友美  |  時間計り忘れ  | 刺客1号
   一碧なつみ |腕ひしぎ逆十字固め| 刺客2号●


================================================================

[*ねいさん、森中廉太郎さんのご協力により作成しました。なおこのエピソードでの試合による評価値の加算はありません。]

[476] 『いんたーみっしょん/港編』 投稿者:阿僧祇 投稿日:03/05/13(Tue) 17:03
2003/05/06

  >新潟港、フェリーポート待合室、夜

 ちょっとおめかしして旅行姿のこの人たち。

竹内亜紀「ほいキップ。一等船室どす。デンワで予約しといたから早かったわ。」
関口彩音「おー、さすが手回しいいな、亜紀ちゃん。」
武田春花「(買い物袋をいくつも下げてやってきて)ただいま〜。買ってきたよ〜、飲み物、弁当、おにぎり、パン、ツマミ類、カップラーメン、サプリメント…。」
関口彩音「買い出しごくろーさん。」
武田春花「さすがに三人分になると重い…2リットルペットボトルだけで4本だもんね〜。」
竹内亜紀「船の中は飲み物も食べ物も高うおますから。」
武田春花「まあ、しゃっちょーによれば、太平洋航路より日本海航路の方が、食事は安くて種類も豊富だっていう話だけど…」
関口彩音「でも市内のスーパーで買う方が、やっぱ安上がりになっぺ。」
武田春花「一等船室に乗る客の発言じゃねーな…」
竹内亜紀「こきなはれ。お金というのは、使えば無くなるものや。なら少しでも無駄なときは慎重に、かつ役に立つときは大胆に使わなあかん。さもなければ貧乏一直線どすえ。」
武田春花「『初めは処女の如く終りは脱兎の如し』…ってやつ?(*『孫子』)」
関口彩音「なるほど、お金持ちの言うことは違うな。」
竹内亜紀「それゆえ、個室が確保できる一等船室にしたんや。鍵かけてぐっすり眠れるさかいに。」
武田春花「しゃちょーによれば、『雑魚寝の二等船室で船旅かまして降りたら野宿して翌日格闘技ってのはたしかにキツイ』って言ってたね…」
竹内亜紀「あんお人だって3泊以上の船旅はまだ経験ありまへんからな。いっぺん、二等船室でタイかブラジルへでも船旅かまして、着いたその日に試合やってみればええんや。新しい発見もあるやろ。」
関口彩音「ムチャクチャな…(汗)」
武田春花「でも、新婚旅行なんか、船旅もいいかもね。…(妄想中)… 海に揺られて日がな一日のんびりと、朝から晩までふたりはベッドの上。…窓に映るのは、波の向こうに見える蒼い島影。飛び交うカモメ。 … そして夕陽の光が差しこむ特等室、BGMにショパンのピアノが流れると、彼の腕まくらに頬を当てて体温を感じてた唇を、そのまま彼の胸にそっと寄せて、軽くちゅっ☆ そうすると星明かりの下で彼は微笑み、髪に置いていた手で優しく、こう…あんっ、やぁん、だめぇ…でも…ああんっ、もうっ…(恍惚)」
関口彩音「…で、そのまま一戦交えるって?(汗)」
竹内亜紀「『彼』のアテでもあるんどすか、武田はん?」
武田春花「あっ!!(赤面) 無え無え(爆汗)! しゃちょーと…その、えーと、珠理さんあたりのそういう姿をちょっと想像しちゃっただけ、それだけだってば。(汗、汗)」
竹内亜紀「…ふーん。」
関口彩音「…元社長と珠理さんの一戦だったらむしろ、そこでゴングの音が聞こえて『ガチンコスパーリング凶器アリ開始』っつーのが自然な発想だっぺよ、んァ?」
武田春花「ウグ、まあね。えっと…あっ、ほら、あっちに佐和子たちがいるよ! 見つからないようにしてなきゃ…」

 そこへやってくるこの二人。

一碧なつみ「ここから船旅ですか?」
綾瀬友美「明日の朝の船で新潟から小樽へ行くように書かれてたわ。ただ…(整理券を手に)…まさかキャンセル待ちになるとは…(ため息)」
一碧なつみ「混んでる時期だったんですね。でももしチケットが取れなかったらどうなるんです?」
綾瀬友美「…考えたくないけど、勝田くんのお婿さんは諦めることに。」
 バサッ!!(荷物が落ちる音)
一碧なつみ「そっ、そんなこと、絶対に許しませんっ!!(涙+胸倉)」
綾瀬友美「ちょっと…わ、私に食って掛かられても…(汗)」
一碧なつみ「だいたい、なんでチケットを向こうで用意してないんですか!」
綾瀬友美「誘拐犯がチケットを予約しといてくれるなんて期待しない方がいいわよ、なんか罠でもない限り。」
一碧なつみ「同じです、どうせ刺客が待ち構えてるんですから!」

 言い争ってると、周囲のキャンセル待ちの客たちの視線が集まり始める。

一碧なつみ「…やめましょう。私たちが争ってても何も始まりません。(手を放す)」
綾瀬友美「そうね。こうなったら開き直って、カフェテリアで何か食べながらキャンセルが出るのを待ちましょうか。」
一碧なつみ「こんな状況で、よく食事する気になりますね!」
綾瀬友美「食べようと食べまいと、結果は同じよ。なら食べといた方が、いざという時に不覚をとらないですむしょう。」
一碧なつみ「…そうですね。いざ智宏くんを救い出す時、もしもおなかが減ってて動けなかったりしたら…(想像中)…そっ、そんな一生の不覚、いやです!! (あわてて涙を拭き、綾瀬の手を掴んで)さあ、食べに行きましょう、いますぐ! 早く、早く!」
綾瀬友美「ちょ、ちょっと、そんなに急がなくても…」
 カフェテリアへ向かう二人。その後ろで…

放送「整理券番号41番から60番のお客様、3番窓口へお並びください。」

勝田佐和子「あっ、戻って来た!」
ワーウルフ美月「二等寝台が3人分取れました。あとはみんな二等船室です。」
勝田佐和子「どういう割り振りにする?」
ワーウルフ美月「これから試合する人が寝台室、他は二等船室でいいでしょうか?」
?????????「じゃ、私たちが寝台室だね?」
?「はい、ありがとうございます。(ふかぶか〜)」
Wキャット「あと1人は?」
勝田佐和子「智にいちゃんに決ってんじゃん。ねえ?」
勝田智宏「いや、女の子を雑魚寝部屋にやって男がベッドを使うわけにいかないだろ。僕は二等船室に行くよ。」
勝田佐和子「(喜)! じゃ、佐和と手をつないで寝ようね!」
勝田智宏「いや、それはちょっと…(汗)」
勝田佐和子「え〜? 実家ではよく、手をつないで寝てくれたのに…!」
 集まる嫉妬の視線。
勝田智宏「だから、子供の頃の話だろ(汗)! 佐和はよく夜泣きして僕らが眠れなかったから、しかたなく…。」
勝田佐和子「わかったよ。じゃ、手はつないでくれなくていいよ。そのかわり、やさしく肩を抱いて…」
THE NORICO「佐和子ちゃん、ダメよ、ワガママ言っちゃ! (向き直り)智宏くん、あなたははお客さんなんですから、気にしないで寝台室を使ってください。」
勝田智宏「でも、それじゃ…」
THE NORICO「私たちのうち、誰が替わってもらっても、不公平な贔屓になっちゃいます。だから、智宏くんがベッドを使ってくれるのが、いちばん公平なんです。」
勝田智宏「でも…」
?「では、こうしたらいかがでしょう。智宏さんは、二等船室で寝るみなさんに、売店のアイスクリームを一つづつおごる。これで納得できるのでは?」
勝田智宏「なるほど…でもそれでいいんですか?」
Wキャット「『三方一両損』ってとこか。まあええんとちゃうか。」
ワーウルフ美月「賛成です。ねえ、佐和子ちゃん?」
勝田佐和子「ぶ〜。(不満そう)」
THE NORICO「ごちさうさま、智宏くん。何度も悪いわね。」
勝田智宏「いやあ。(照)」
Wキャット「じゃ、決まりや。あっ、そうそう、このマスク、試合でつかってくらはい。よく洗ってコインランドリーで乾かしときまひたから。」
?「これはこれはご丁寧に。」
?????????「じゃ、私はNORICOさんの使ってたマスクですね。」
勝田佐和子「衣装は自分で用意してるんでしたね。」
THE NORICO「着替えはお風呂の脱衣所でしてください。」
ワーウルフ美月「二等船室や二等寝台で着替えたら、さすがに恥ずかしいですか。」
THE NORICO「寝台は狭いの我慢すればなんとかなるにしても、船室はなんにも隠すものがないものね…(汗)」
ワーウルフ美月「…げぇ〜、そうですね、わたしたち二等船室でしたっけ。狭い上に足臭いそうですね〜…隣の人とくっついて寝てないといけないし。」
Wキャット「ぼやかない、ぼやかない、自分で決めたことやろ。2002年組、みんな一蓮托生やで。」

放送「間もなく、乗船開始時間となります。」

勝田佐和子「おっ。行こうか。」
THE NORICO「慌てなくても、船室は逃げないわよ。」
Wキャット「いや、綾瀬はんたちと顔合せないように、早めに落ち着いた方がええやろ。
THE NORICO「それもそうね。留守番班との連絡も、早くしといた方がいいわ。出港したら、天気次第では甲板に出ても携帯の電波が届かなくなるから。」
勝田佐和子「さっ、智にいちゃん、行くよ!」
勝田智宏「待てよ、僕にはみんなの荷物があるんだから…」
ワーウルフ美月「やっぱり、自分のは自分で持ちますよ。大変でしょう?」
勝田智宏「いや、これくらいさせてもらいます。費用を出してもらって賓客待遇で旅行してるんですから、少しは役に立たないと。それに体力トレーニングにもなりますしね、一石二鳥です。」
ワーウルフ美月「そこまで言うなら…」
THE NORICO「…男の子なんだから、まったく。(はーと+ウィンク)」
勝田智宏「そ、そんなんじゃ…(照)」
ワーウルフ美月「じゃ…お願いします。」
Wキャット「ありがとね。」
勝田佐和子「早く、早くぅ!!」
勝田智宏「今行くってば! よっこいしょっと…」

 ・・・・・・。

竹内亜紀「…ほ〜んにやかましい連中や。」
武田春花「ほんとほんと。あんな目立っちょって、よく綾瀬さんたちに見つからんもんづら。」
関口彩音「・・・・・。(心の声:おめーもあんまり他人のこと言えねえ人だと思うけどなあ(汗))」

  …つづく

 ===============================

*ねいさん、森中廉太郎さんのご協力により作成しました。なおこのエピソード単体による評価値の加算はありません。

[478] 『いんたーみっしょん/船旅編』 投稿者:阿僧祇 投稿日:03/05/13(Tue) 17:09
2003/05/07

  >敦賀発新潟経由小樽行客船 食堂、午後

 変装してるこの三人。
 髪をアップにして帽子を被りジーンズ姿の竹内亜紀。
 サングラスをかけ茶髪のヘアピースをつけふりふりシャツを着てる関口彩音。
 髪を解いてバレッタでお下げにし、フォーマルなスーツを着込んでる武田春花。
 三人とも、なんとなく服のサイズが合ってない。(汗)

 三人は、安いジュースと野菜サラダだけ何杯もお代わりしている。

関口彩音「しっかし、スカートってのスースーすっぺなあ。いつもこんなんはいてるんか、武田、おめ?」
竹内亜紀「そんなことより、この服、胸がキツすぎや、関口はん…息、苦しいわ。胸のボタン、はずしてもええやろか?」
武田春花「セクシィ亜紀ちゃんになっちゃうからやめた方がいいよ(汗)。それはそうと、この船、甲板にプールがあるんだって。あとで行ってみない? 平泳ぎで県2位獲ったはるか様のダイビング、見せてやるよ。」
関口彩音「外で泳ぐのはまだ早えっぺ」
竹内亜紀「それ以前に、あれは子供用のプールや。腰より下の深さまでしか水がないから、ダイビングなんて無理どすえ。」
武田春花「げえ、そうなの? 映画に出てくるようなでかいプールを想像してた。」
竹内亜紀「まさか。外国へ行く豪華客船じゃあるまいし…。」
武田春花「…あっ、綾瀬さんたちだ。私たちのことバレちょし、ふたりとも?」
 こそこそこそ。


 食堂に入って来たのは綾瀬友美と一碧なつみ。
 トレーを持ってカフェテリアに並び、食べたいメニューを取っていく。
 そして支払いを済ませると、空いてる席につく。
 食事しながら、綾瀬の持っていた封筒の手紙を確認する一碧。

一碧なつみ「じゃあ、今夜、甲板にこいっていうんですね。」
綾瀬友美「うん。これはおそらく、次は甲板で試合することになるんじゃないかと…」
一碧なつみ「夜の甲板ですか。見えにくくて難しそうですね。」
綾瀬友美「それより心配なのは、足が滑りやすいことよ。」
一碧なつみ「足が?」
綾瀬友美「ちょっと天気が悪くなってきたからね。一雨来て甲板が濡れたりしたら、つるっと滑って夜の海にボチャンなんてことも。なにせ夜だから、誰にも気づいてもらえなかったら、まず助からないわね…とくにあなたは転びやすい上にカナヅチなんだし。」
一碧なつみ「…ぞぉ〜〜〜〜〜っ(真っ青)」

近くの客A「なあなあ、あれ、もしかして…一碧なつみと違うか?」
近くの客B「うん。実は俺もそう思って気になってたんだ。」
近くの客A「REALの女子プロ、面白いよねえ。また新潟でやらないかな…」
近くの客B「一緒にいるのって、もしかして、善女の綾瀬友美?」
近くの客A「ばか、善女はもう無えよ。今はDIAの綾瀬友美だ。」
近くの客B「でも、北海道に行くなんて、試合でもあるのかなあ?」
近くの客A「休暇で旅行じゃないのか? 他の選手を見掛けないし…」
近くの客B「いや、俺はもう1人見たぞ。」
近くの客A「え? 誰、誰?」

 どきどきワクワクしながせら聞いてる方言トリオ。(笑)

近くの客B「WARS☆Rの…」

 さらにどきどきワクワクしながら聞いてる方言トリオ。(笑)

近くの客B「WARS☆RのTHE NORICOが、船内ゲーセンのキャッチャーでテディベア獲ろうとして必死になってた。」

 がたっ、とズッこける方言トリオ。(汗)

近くの客A「それだけ?」
近くの客B「うーん…他には見ないなあ。といっても、俺も、女子プロレスラーをそんなにたくさん知ってるわけじゃないしね。実は無名の女子レスラーがそのへんをうろうろしてるかも。」
近くの客A「スター選手だけは、あんまり騒がれないように、特等室に閉じこもってるのかもね。それで、一碧とか綾瀬みたいに2人くらいづつ食事に来てるのかも。」

 二人の客に抗議しようとする武田春花の口を抑えて、食堂の外へ連れ出す竹内と関口。

近くの客A「どうするよ。一碧なつみに声かけて、サインでももらってみる?」
近くの客B「でも、もしもプライベートの旅行だったら邪魔しちゃ悪いしな…まあ小樽に着くまで時間もあるし、ちょっと考えてみるよ。」


一碧なつみ「それにしても、船旅って退屈ですね〜。何にもすることがなくて。」
綾瀬友美「そう? ああ、あなたはまだ若いから…社会人にとっては、こういうのんびりした時間ってすごく貴重なのよ。」
一碧なつみ「そうなんですか。でも、私はちょっと手持ちぶさたで困っちゃいます…新潟で買った『恋■白書スタート』(*)も読み終わっちゃったし…」
 (*女の子向けのちょっとだけえっちな少女漫画の雑誌。)
綾瀬友美「時間まで、休憩室で船内ビデオでも見てましょうか。」
一碧なつみ「何やってます?」
綾瀬友美「えーと、この時間だと…(ちらしをチェック)…『格闘美少女隊レスルーズV(ブイ)・総集編』だって。聞いたこと無いけど…」
一碧なつみ「なんか、つまんなそー…どんな番組ですか?」
綾瀬友美「さあ? 変身特撮物みたいだけど…」
近くの客B「(急に)『レスルーズV(ファイブ)』? 知ってます知ってます、それ!」
一碧なつみ「うわっ、びっくりした!!」
近くの客B「茨城県と千葉県の限定で半クールだけ流れた、幻の番組なんですよ、『レスルーズV』って。」
綾瀬友美「へえ…詳しいんですね(心の声:特撮マニアかしら?)」
近くの客B「知らないんですか? えっと、失礼ですけど、綾瀬友美さんと一碧なつみさんですよね?」
綾瀬友美「あ、はい、そうですけど。」
近くの客B「その番組、当時売り出し中の若手女子プロレスラーの人たちが何人も出てたんですよ。えっと、たしか変身するヒロインが、山上あかね/中原千早希/空白いずみ/セラフィム=レイ。巨大ロボットに変身する少女型アンドロイドの役で梓実さくら。敵の幹部役にセリア=エンジェルとファントム珠理。この二人が、下っぱの男をいびるシーンが、本気で痛そうでなかなか…悪の首領と、ヒロインの山上あかねとの悲劇っぽいロマンスとかもありましたし…」
綾瀬友美「へえ。けっこう豪華キャストだったのね。」
近くの客B「もっとも、一ヶ月半で打ち切りでしたけどね。(汗)」
一碧なつみ「その4人が変身したんですか?」
近くの客B「もう一人だれかいた気がするんだけど…誰だっけ?」
近くの客A「さあ…思い出せない。忘れちゃうくらいだから、無名の奴だったのとちがうかな?」

 食堂に暴れ込もうとする武田春花を、しがみついて必死に抑える関口と竹内。

近くの客A「あっ、思い出した、思い出した! たしか、『た』のつく奴だった。」
綾瀬友美「『た』のつく女子プロレスラー?」

 食堂の外で、期待にあふれた顔をしてる武田春花。

近くの客A「た…た…」
綾瀬友美「た…た…」
近くの客B「た…た…」
一碧なつみ「た…た…」

武田春花「(期待の小声)たけだはるか、たけだはるか!」

近くの客A「た…高山みるく!」
近くの客B「た…高村あかね!」
綾瀬友美「た…高岡ユーリ!」
一碧なつみ「た…た…たぬき!」

 食堂の外でオーバーヘッドキック状態にずっこける武田春花。

綾瀬友美「…たぬきはちがうでしょ、しりとりやってるんじゃないんだから。(汗)」
一碧なつみ「あ、あの、着ぐるみ姿の梓実さくら先輩を思い浮かべてしまいまして…」
近くの客A「う〜ん、誰だったかなあ…た…た…」
近くの客B「た…立花美里…田中貴子…竹内亜紀…ターキー…」
近くの客A「た…田町…滝野川…宝塚…谷川岳…竜飛崎…多麿霊園…」

 外では、泣き喚き暴れ騒ごうとする武田春花を、必死に抑えつけて引きずり連れ去る竹内と関口。

綾瀬友美「観てみればわかるでしょう。じゃあ、先輩たちの出た特撮ドラマでも見て時間潰しましょうか、ね、なつみちゃん?」
近くの客A「時間…て、このあと何かあるんですか?」
一碧なつみ「うん、今夜、甲板で勝負が…」
綾瀬友美「シッ!」
 しまった、という顔の一碧なつみ。
近くの客B「あの…それって…?」
綾瀬友美「くぅ〜」
 まずいことになったという表情の綾瀬友美。ごめんなさいという表情の一碧なつみ。
綾瀬友美「あの、内緒にしといてくださいね。実は…」
 当たり障りの無い範囲で事情を説明する綾瀬友美。

近くの客A「へえ…退屈な船旅だと思ってたら、思わぬエンターテイメント!」
近くの客B「綾瀬友美&一碧なつみタッグによる野試合@客船の甲板か。ぜひ応援に行きますよ!」
綾瀬友美「ははは…あんまり喋らないで下さいね。(汗)」

 船は水もの流れもの、この次の勝負はどうなりますやら…。

 …つづく!

 ====================================

*ねいさん、森中廉太郎さんのご協力により作成しました。なおこのエピソード単体による評価値の加算はありません。

[483] 『暗黒の1つめ』第3の意外な刺客 投稿者:阿僧祇 投稿日:03/05/15(Thu) 21:19
2003/05/07

  >敦賀発新潟経由小樽行客船 甲板、夜

 準備万端、戦闘態勢。
 リンコスの上に上着を着て、綾瀬友美と一碧なつみは脱衣所を後にした。

 船旅の客が談笑しているロビーを抜け、階段を登る。
 デッキの扉に描かれている文字…

 「甲板は滑りやすいのでご注意ください。夜間の通行を禁止します。」

 ふたりは警告を無視して扉を押す。他の扉は鍵がかけられていたが、手紙で指定されていたこの扉だけはすぐに開いた。

 暗い甲板へ出ると、目の前に夜の日本海が真っ黒に広がっていた。
 金属質の床は全体を緑色のペンキで塗られ、わずかな蛍光燈の照明だけが足元を照らしている。
 船のエンジン音と、スクリューが波を切る音だけが途切れること無く低く響いていた。
 海風が頬を叩き、少し肌寒い。

綾瀬友美「やっぱり雨が降ったみたいね。足元、滑り易いから気をつけて。」
一碧なつみ「うう…なんか恐いです。足元が、ゆ〜らゆ〜ら、ゆ〜らゆ〜ら、揺れてる気がして…」
綾瀬友美「それは揺れてるわよ、船なんだから。」
一碧なつみ「ううっ…」

 嫌々ながら、指定されたルートに足を進める二人。
 人の気配の無いうす暗い外部通路を抜け、下部甲板のプールサイドを通り、滑りやすい狭い階段を登ってようやく、指定された後部甲板へたどり着いた。

綾瀬友美「ここか…」
一碧なつみ「誰もいないですね…いえ、大勢の気配!?」

 その瞬間!
 目がくじけるような光が甲板に降った。
 と、同時に、ブリッジの上から数十人の人々の喚声が響き渡る。
 ようやく目が慣れてきた二人が観たものは…

 特別に明るくライトアップされた、緑色の後部甲板。
 そして、ブリッジを見上げれば上層甲板に押すな押すなの人だかり。
 しかも、甲板が見える窓、扉、そして通路にまで人だかりができていた。
 少なく見積もっても100人は観客がいそうだ。
 それだけでなく、ブリッジからは即席の垂れ幕が落ちてきて、そこには大きく
「必勝 最凶暴走教師 綾瀬友美」
「爆勝 無敵子だぬき 一碧なつみ」
 の文字が。

カフェテリアで会った客A「綾瀬〜! がんばれよ〜、期待してるぞ〜!」
カフェテリアで会った客B「一碧〜! ジャーマンだぞ〜、絶対決めろ〜!」

綾瀬友美「あ、あいつら…ナイショって言っといたのに…(汗)」
一碧なつみ「ま、船旅でみんな退屈してますからね〜(汗笑)。それにつけても、ファンの人って、本当に有難いものです。」
 声援に応えて一碧が手をふれば、さらに拍手と喚声が降り注ぐ。

 その直後、BGMとともに、スピーカーから声が流れてきた。

BGM『♪銀の地平線〜 伝えてよこの想い〜…(「銀の地平線」"Nails"より)』
頭に包帯を巻いた覆面女の声「綾瀬友美! それに、おまけの一碧なつみ! よく来た!」

一碧なつみ「だから、おまけじゃないって言ってるでしょ!」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「じゃあ、おばけの一碧なつみ。」

一碧なつみ「…ここで次の一言も言ったら、頭蓋骨陥没させますよ?」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「・・・・・。」

 こんどはあっちが黙る番であった。(笑)

頭に包帯を巻いた覆面女の声「…気を取り直して。第3試合はここで行う。形式はプロレスのタッグマッチ。甲板の外へ出たらリングアウト…つーか、そこは夜の海だから、下手に落ちたら死ぬかも。(汗)」

 おお〜、とどよめく観客たち。
 綾瀬/一碧の顔にも緊張が走る。

頭に包帯を巻いた覆面女の声「では〜、ただいまから本日のメインイベント、タッグマッチ時間無制限一本勝負を開始します。まずは赤っコーナー…」
BGM『♪I was looking for some dreams くだらない優越感…(「CLIMAX」奥井雅美)』  

頭に包帯を巻いた覆面女の声「…DIA−JAPAN所属〜、綾瀬友〜美〜!」

綾瀬友美「いくぞっ!」
 上着をバッと脱ぎ捨てリンコス姿でポーズを取る綾瀬。拍手が沸き起こる。

頭に包帯を巻いた覆面女の声「おなじく、プロフェッショナルレスリングREAL所属、一碧なつ〜み〜!」

一碧なつみ「がんばりまーすっ!」
 再び、観客たちに手を振る一碧。これも拍手が降って来た。

 100人ぽっちとはいえ、精一杯の喚声と拍手が夜の海に広がって消えていった。
 音が反響して集まってくるスタジアムとはまた違う感覚だ。

頭に包帯を巻いた覆面女の声「青コーナー、所属不明・正体不明、秘密結社・暗黒の1つめ〜、刺客〜シス〜タ〜!!」

 突如、壮大な『ハレルヤ・コーラス(オラトリオ“メサイア”〜ヘンデル)』が甲板に鳴り響く。
 曲のクライマックスで、例のキツネ目の覆面の上から修道女の頭巾を被った女子プロレスラーが、扉の周辺の観客をかき分けて入場。ただし服装は緑色の水着で、胸に赤い十字が描かれ、前に掲げた右手には銀のロザリオ(小さな十字架)を握っている。

カフェテリアで会った客A「げっ!! ジャンカルロ=ベラぁ!?」
カフェテリアで会った客B「え、誰それ?」
カフェテリアで会った客A「もと、ひたち女子いう超ローカル弱小団体の…あ、いや、折目正しいプロレスファンとして、覆面レスラーの正体を詮索してはあかん。。。」

 刺客シスターは甲板の真ん中まで来ると、跪いて指を組み、ロザリオを掲げて天を拝む。そして素早く十字を切ると、左手にロザリオを持ちながら立ち上がってすーっと右の掌を高く挙げて天に向けるというポーズを取った。
 その仕種に、こちらも観客の拍手や口笛が甲板を包む。

綾瀬友美「お客さんは、別にこっちの味方ってわけじゃないのね。(汗)」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「同じく〜、所属不明・正体不明、秘密結社・暗黒の1つめ〜、刺客〜巫〜女〜!!」

 今度は、平安朝の管絃の音が鳴り響く。雅楽『越天楽』…神前結婚式のときに聞けるあの伝統的な曲だ。
 曲が盛り上がったところで、やはりキツネ目の仮面をつけた、白装束に赤袴の女子プロレスラーが、御幣を持ち同じルートからしずしずと登場。リングの真ん中で三つ指ついて、観客と対戦相手にお辞儀する。そして膝立ちになると、御幣をサッ、サッ! と振って早口の大声で「天津祝詞」を唱え始めた。
刺客巫女「高天原にみおやすめの大神(おおかみ)、あまたの神々を問い集えとことわに神つまります、かむろぎかむろみの命(みこと)もちて、神いざなぎの命、筑紫の…<中略>…祓い給え清め給えと申すことの由を、天のふち駒の耳振り立てて聞こし召せと、かしこみかしこみ、申〜〜〜す〜〜〜ぅ…(サッ、サッ!) 神(かん)ながら魂(たま)ち栄(は)えませ、神ながら魂ち栄えませ〜〜〜!!(サッ、サッ!)」

 異様なムードが盛り上がり、またも拍手と歓声が沸き起こった。

綾瀬友美「(呆然)なっ…なんで巫(かんなぎ)がこんなとこに現れるのよ!? しかもあんな覆面つけて!」
一碧なつみ「綾瀬さん、綾瀬さん…覆面レスラーの正体を詮索してはいけません。」

THE NORICO(WARS☆Rのロゴトレーナー姿)「え〜、レフリーは私、WARS☆R所属、<font size=+10>THE NORICO</font>っっっ…が務めさせていただきま〜すっ。」

カフェテリアで会った客A「なるほど! NORICOはこのために来とったんかぁ!!」
 観客と言うのは、しばしばハプニングもイキな演出と解釈してくれる有難い存在である。たとえば、右のグローブが使えなくて仕方なく左だけ付けて異種格闘の試合に出てみたら、それを観た観客の人はカッコいいと…いや、閑話休題(=話がそれました)。

THE NORICO「では、バッディングはしないように。サミングは反則。凶器は20カウントまで…」

 説明が続くあいだ、ライトアップされた吹きさらしの甲板の真ん中でにらみ合う4人。

THE NORICO「では…ファィッ!」

 カーン!
 どこからともなく響いたゴングの音とともに、周囲の観客から拍手が上がる。

 まずは一碧と刺客巫女がコーナー…らしきところにに下がり、綾瀬と刺客シスターの対戦。
 刺客シスターは充分に距離を取ると、頭巾をはためかせ助走をつけてドロップキック。しかし距離が長かったため綾瀬はこれを腕でラリアート気味に迎え撃つ。体重の無い刺客シスターはきれいに吹っ飛んでしまった。
 綾瀬は一気に攻勢に入る。まずは払い腰、つづいて一本背負い、そしてバックドロップまで炸裂!
 合金製の床に何度もたたきつけられ、刺客シスター、早くもグロッキー気味。
 しかし、綾瀬が諸手刈りをしようとしたところで裏をかいて必死の飛び膝で逆襲。これが顔に入り、一瞬怯んだ隙をついてアマレス式首投げ! 今度は綾瀬が叩き付けられた。さらに、ボディプレス!
 ここで刺客シスターは十字を切って天に懺悔のパフォーマンス。

綾瀬友美「き…金属の床に投げられるって、効くのね〜」

 綾瀬が、受け身で叩き付けた掌に息を吹きかけながら立ち上がろうとする間に、刺客シスターはふらふらとよろけながら刺客巫女にタッチ。

 刺客巫女は、御幣でさっ、さっ、とお払いしてからリングイン。ようやく立ち上がった綾瀬に、ショートレンジでの前蹴り・横蹴りのコンビネーションで攻めかかった。
 綾瀬は強引に掴まえようとするが、これが何度も前蹴りの餌食となってしまう。
 手すり際に追いつめられた綾瀬、ようやく見切ったか、上段蹴りが来たのを顔面犠牲で掴まえ、強引に捻り倒して膝十字を狙う。が、やはり顔面へのもろヒットはただ事ならなかったか、腕に力が入らなかったようで、もがかれ逃げられてしまった。
 しかし綾瀬はここで一碧と交替に成功。

 一碧は刺客巫女のキック攻勢に自分もローキック主体で応戦。激しい蹴り合いに観客の声援も一層ヒート。一碧は勢いで刺客巫女を圧倒、突然のタックルで転倒させると、リストロックから脇固めへの得意パターン。
 刺客巫女、ギブアップせず必死に粘り、ついにデッキの壁に足をぶつけてロープブレイク。直後、立ち上がった刺客巫女に飛びついて、いきなりジャーマンスープレックスが爆発。『ごぃぃぃん!』、という金属音が鳴り響いて刺客巫女の後頭部が甲板に叩きつけられた。
 そのままカウントが入る。
 が、そのとき! 上層甲板で観客をかき分ける姿が…上層看板の手すりに足をかけたのは、刺客シスター。高さ3mはあるそこから、十字を切って「アーメン!」と叫ぶなり、一碧に向かって一気にダイブ! フライングボディプレスだ!
 ブリッジ状態から抜けようとする途中でこれに押しつぶされてしまった一碧、さすがに大ダメージで立ちあがれない。それは刺客シスターも同じなのだが、その間に刺客巫女はなんとか回復。まだふらついてる一碧に「祓い給え!」「清め給え!」と絶叫しながら地獄突き(貫手)の連打を食らわせてノックダウン。そのままカバーにいく。
 カウント。1、2…。

綾瀬友美「なつみちゃんっ! 勝田君がどうなってもいいの!!?」

 かろうじて肩が浮いた。
 刺客巫女、そこから腕ひしぎに移行しようとしたが、一碧も必死に抵抗、どちらも決め手が無いままブレイクとなる。

 ここで一碧は咳込みながら綾瀬と交替、刺客巫女も刺客シスターと交替。
 しかし、体力が回復してる綾瀬に対し、刺客シスターはフライングボディプレスのダメージがまだ残っている感じ。綾瀬の張り手一発でふらふらとダウンしてしまう。
 綾瀬はそのままグランドに行こうとするが、刺客シスターは精一杯抵抗。綾瀬、状況打開を狙ったのか刺客シスターの腕をホールドしたまま甲板をゴロンゴロンと移動。両者、手すりにぶつかり、危うく海に落下しかけて観客から悲鳴が上がる。
 ブレイクとなったが、刺客シスターはここで突進してジャンプ、二段蹴りをお見舞い。奇襲された綾瀬がスリップダウンすると、今度は刺客シスターが飛びついて、強引にv1アームロックを極める。
 綾瀬、ねばりにねばってなんとか力任せにこれを外す。
 刺客シスターは手すりに飛よじ登ってそこからギロチンドロップ、一応十字を切って懺悔してからカバーに行く。

 ここで刺客巫女に交替。
 刺客巫女はまだ膝をついてる綾瀬の足を蹴ってバランスを失わせると、組みついてなんと袈裟固めに入る。自分の得意技で抑え込まれた綾瀬、屈辱の表情で必死に暴れ、手すりに足がひっかかってブレイク。
 しかし今度は、拳打から猿臂に行こうとした刺客巫女に、強引な張り手連打を浴びせて圧倒、チョークスラムで叩き付けてカバー。
 ブレイクすると、自コーナーに近かった刺客巫女はすぐにタッチ、刺客シスターが飛び込んでドロップキック、これで綾瀬が尻もち。
 刺客シスター、とどめとばかりに手すりによじ登ったが、足がふらつき、バランスを崩してしまう。
 観客から悲鳴が上がり、場外落下! …と思われた瞬間、ちょうど近くに来ていた一碧が手すりのしたから手を伸ばして、辛うじて手を掴まえていた。

 甲板の横に、ぶらんとぶら下がる刺客シスター。

刺客シスター「ひ、ひぇぇぇ…(爆汗)」
一碧なつみ「暴れないで! ゆっくり、ゆっくり上がってください!」

 綾瀬、刺客巫女、THE NORICO、頭に包帯を巻いた覆面女、その他観客たちが集まってくる。

頭に包帯を巻いた覆面女「大丈夫ですか〜!?」
刺客シスター「いや、これは…一碧さん、無理に引っ張り上げるより、ゆっくり降ろして。上手く息を合せれば、下の通路に飛び込めそうです。」
一碧なつみ「はい。…じゃ、いきますよ…3、2、1、それっ!」
刺客シスター「アーメン!」

 一碧の手が離され、観客から一斉にあがる悲鳴。

 刺客シスターの頭巾が、真っ黒な水面に落ちて水音を立てる。が、刺客シスターはなんとか舷側の通路に転がり込んだ。

 一斉に安堵のため息。

 レフリーのTHE NORICOがマイクを取る。

THE NORICO「え〜、ただいまの試合、刺客シスターの場外が20秒以上と思われますので、時間計り忘れ・リングアウトにより、綾瀬・一碧組の勝利です!!」

 湧き起こる拍手と歓声。
 疲れ切ったふたりだが、手を取り合って拳をふりあげ、観客の歓声に応えた。

THE NORICO「それでは、本日の試合を終了いたします。みなさま、御観戦ありがとうございました。足元が滑りやすいので、気を付けてお帰り下さい。最後に、退場する綾瀬・一碧両選手を、あたたかい拍手でお送りください。」

 拍手と口笛の中、狭い階段を降りて退場していく二人。照明もしだいに消えて行った。

綾瀬友美「ふわぁ〜…地べたもつらかったけど、下が金属ってのはもっと効くわね。」
一碧なつみ「時間的には短い試合だったと思うですけど、なんか消耗しました〜」

 膝が笑いそうになりながらプールサイドまで来た時…、一碧の足がもつれた!

綾瀬友美「え…?」

 ばしゃーーーーん。。。。

 水煙があがり、一碧が子供用プールに落ちた。

綾瀬友美「ちょっと、なつみちゃん! しっかりし…」

一碧なつみ「ぶくぶく、がぼがぼ!(涙)」

綾瀬友美「…だから、なんでこんな浅いとこで溺れるのよ、あんたはっ!!(汗)」
 急いで子供用プールに降りて、一碧を引き上げようとする綾瀬。しかし試合後の疲労で、一碧を持ち上げることができない。
 困っていたところへ、一人の青年?が飛び込んできて、手を貸してくれた。
????「大丈夫ですか?」
綾瀬友美「あっ、はい、ありがとうございます。」
 暗くて青年の顔はよく見えないが、どこかで憶えがある体格と声だ。
????「なつみちゃん、なつみちゃん、しっかり!」
 一碧は気を失っている。
 青年は一碧の顔を横に向けてプールサイドに寝かせると、胸を押して水を吐かせた。
綾瀬友美「…人工呼吸も必要かしら?」
????「えっ!?(汗)」
 一瞬ためらった青年だが、意を決して、息を吸い込み、口を一碧の口元に…
一碧なつみ「う…うーん…」
 唇が触れる寸前、一碧の吐息が青年の唇を包んだ。
????「だ、大丈夫。ちゃんと息してます。(焦、焦、)」
綾瀬友美「そう、よかった!」
????「体が冷えてますから、このままお風呂…は頭を打ってたらあぶないか。シャワーで汗を流して、早く寝かせてあげてください。」
綾瀬友美「ええ、そうね。ところであなたは…?」

 その時

頭に包帯を巻いた覆面女の声「智にいちゃん! 早く早く!」

????「あ、それじゃ…なつみちゃんのこと、お願いします、綾瀬先生!」
綾瀬友美「あ、ちょっと!」

 あわてて走り去っていく謎の青年。

綾瀬友美「も、もしかして…勝田君…なの!?」

 混乱する綾瀬友美。
 そのときになってようやく、一碧が目を覚ました。

一碧なつみ「う〜ん…あれ? 綾瀬さん、どうしたんですか、恐い顔して向こうを睨んだりして?」

  …つづく。

 ====================================

*ねいさん、森中廉太郎さん、4103さんのご協力により作成しました。なおこのエピソード単体やここに描かれてる試合による評価値の加算はありません。

[484] 『いんたーみっしょん/北海道編』 投稿者:阿僧祇 投稿日:03/05/15(Thu) 21:21
2003/05/08

 早朝、フェリーは小樽港に着いた。

観客A「じゃあ、綾瀬さん、一碧さん、がんばってくださいね。近くで試合があるときはまた見にいきますから。」
綾瀬友美「どうぞよろしく〜」
一碧なつみ「元気でね、ふたりとも。」

 船の中で知り合った男・AとBは、Tシャツに綾瀬と一碧のサインをもらい、御満悦で下船していった。

綾瀬友美「さて…ここから市内バスで小樽駅、JRで札幌に出て、札幌から長距離バスで…」
一碧なつみ「え〜っ…まだ長旅が続くんですね。」
綾瀬友美「しかたないわ。勝田君を取り戻すためですもの。」
一碧なつみ「智宏くん…もう、一週間も声を聞いてない…(涙ぐんで)…早く会いたいよう…(泣き出す)」
綾瀬友美「がんばるのよ。あと一週間できっと会えるから。」
一碧なつみ「まだもう一週間もあるんですよぉ〜!! 耐えられません!(泣きじゃくる)」
綾瀬友美「よしよし…(頭を抱いてあげる)」

 そんな二人を尻目に、WARS☆R緑萌軍の一部…通称『秘密結社・暗黒の1つめ』のみんなを乗せたバンがスロープを降り、公道へ出て行く。

 ハンドルを握るのはTHE NORICOこと蕨沢憲子。
 助手席には、1/5万の道路地図で一生懸命ルートを確認してる美少年・勝田智宏くん。
 NORICOはちらちらと横目で智宏くんを見て、なんとなくご機嫌の様子。
 ラジオが奏でるカントリーソングに合せ、指でハンドルを叩いている。

 後ろではシートを倒し、毛布が入り乱れた『蜂の巣状態』でみんな爆睡中。
 勝田佐和子の足が清水政子の首にかかり、ワーウルフ美月のお尻がホワイトキャットの腹に載り、Wキャットは平山絵美のアキレス腱に抱き着きと、それぞれが絡み合っている。

勝田智宏「みんな、よく寝てますね。」
THE NORICO「二等船室じゃ、みんな興奮しちゃって熟睡しなかったらね。私だけ、政子さんに寝台と変わってもらって、トクしちゃった。智宏くんのおかげです。(ハート)」
勝田智宏「いえ…NORICOさんは運転があるって聞いたから、ゆっくり休めた方がいいんじゃないかな、と思いまして。」
THE NORICO「アイスクリーム、得しちゃったな。(ペロッ☆)」
勝田智宏「あ…。」
 二等船室に行った皆には、寝台席をもらった智宏くんがアイスクリームをおごったのであった。もちろんNORICOにも。
THE NORICO「政子さん、気がついてないから、このことはナイショね☆(唇に人差指をあててウィンク☆)」
勝田智宏「ははは…あ、次の信号を右です。」

 ・・・・・。

 1時間半ほど走ると、バンは森の中にポツンとあったコンビニの駐車場へ滑り込んだ。

THE NORICO「みんな寝てるから、私たちだけで行きましょう。」
勝田智宏「はい。」
 朝食を調達しに行く二人。
 パン、おにぎり、コーヒー、ドリンク、おかし、果物などを買い込むと、駐車場へ戻る。

THE NORICO「はい、智宏くん☆ ひとつ、食べません?(楊枝付からあげを差し出す)」
勝田智宏「あ、ありがとうございます。(ひょい、ぱくっ)」
THE NORICO「ちょっと外の空気を吸ってから戻りましょう。」
勝田智宏「そうですね。」
 NORICOがベンチに腰掛けようとすると、すかさず上着を脱いで敷く智宏。
THE NORICO「そんなに気を使わなくても。」
勝田智宏「ノリコさんはスカートでしょう? 僕の上着は洗えば済みますけど、女の人は下半身が冷えたらいけませんから…」
THE NORICO「うふふ、やさしいんですね☆」
勝田智宏「あっ、いや…(汗)」
THE NORICO「ほら、勝田君も座って。」
勝田智宏「は、はい。」

 コンビニの周りの木々を抜けていく、北海道の5月のそよ風。
 その中でほとんどくっつくように座りながら、果物ジュースと軽食を味わう美少年と美少女。
 周囲には誰の気配もない。
 これでロマンチックな雰囲気にまったくならなかったら嘘だ。(笑)

勝田智宏「もぐもぐ、ごくん…(心の声:あ、ノリコさんの腕がくっついて体温が…って、僕はなにを考えてるんだ!!)」
THE NORICO「…智宏くん?」
勝田智宏「! は、はい!(なぜか赤面)」
THE NORICO「ほら、食べかすがくっついてる。」
 NORICOが智宏の口元を指で拭う。そしてそれを自分が食べてしまおうと…
勝田智宏「待った!」
 あわててNORICOの手を止め、ティッシュペーパーで拭き取る智宏くん。
勝田智宏「だめですよ、そんなことしちゃ。ノリコさんが彼氏に叱られちゃいます。」
THE NORICO「うふふ、優しいんだ☆ …でもね、私いま、付き合ってる人、いないんです。」
勝田智宏「あ…すみません。ノリコさんて魅力的だから、きっと彼氏がいるだろうと思ってました。」
THE NORICO「うふふ…うれしいです。でもね、去年、別れちゃったの。(ちょっと悲しい表情)」
勝田智宏「す、すみません、変なこと思い出させて…」
THE NORICO「いいの。智宏くんには、話しておきたいなって思ったから。」
勝田智宏「あの…」
THE NORICO「だめよですね…フリーの練習生とかやってると、何か学べそうなものがあれば何も考えずにそこへ行っちゃうんです。だから、彼との時間がなかなかとれなくて、『俺とプロレスとどっちが大切なんだ、デビューもできなかったくせに!』って言われて…無視してたら浮気されて。」
勝田智宏「…僕ならそんなこと言いません。浮気もしない…きっとしないと思う…たぶん、しないんじゃないかな? (まチョット覚悟はしておけ?(汗))」
THE NORICO「しないでしょうね、智宏くんは。(ニッコリ) …智宏くん、彼女は?」
勝田智宏「い、います! とりあえず1人。」
THE NORICO「…2人以上いたらぶん殴ってるところよ。」
勝田智宏「そりゃそうですね。(汗)」
THE NORICO「そっかぁ…(ため息)…いたんですね、彼女。」
勝田智宏「ええ。」
THE NORICO「そりゃそうね。智宏くん、優しくてカッコいいもん、佐和子でなくても、ほっとくわけないですよね。」
勝田智宏「そりゃ言い過ぎですよ(汗)。むしろきっと、なつみちゃんにふさわしい彼氏になろうとして努力したから少しはそうなれたのかも…」
THE NORICO「なつみちゃんっていうんですか、彼女?」
勝田智宏「あ、はい。」
THE NORICO「どんな人?」
勝田智宏「どんなって…可愛くて、なんかほっとけなくて…」
THE NORICO「何やってる人?」
勝田智宏「あ、女子プロレスラーやってます。今、REALに所属で…」
THE NORICO「REAL…て、もしかして…もしかして、一碧なつみぃ!?(驚)」
勝田智宏「あ、はい…そうです。でも、このことはナイショね☆(唇に人差指をあてて必死に目配せ)。マスコミとかについてまわられたくないですから。」
THE NORICO「そうなんだぁ…一碧なつみかあ〜。…ぜったいかなわないな、これは。(ため息)」
勝田智宏「はい?」
THE NORICO「ううん、こっちのこと。さて…(食べ終わって)…戻りましょ。」
勝田智宏「はい。」
 立ち上がる二人。
THE NORICO「あ、智宏くん、また食べかすが…とってあげる。(智宏の顎に手を)」
勝田智宏「え? あ・・・・・!!!!!」

 一瞬だけ、NORICOの唇が智宏くんの唇に重なった。
 パニックに陥って、硬直してしまった智宏くん。

THE NORICO「ごめんね…ごめんなさい。…もうこんなこと二度としないから。このことはナイショ…ね☆(唇に人差指をあててウィンク☆)」
 NORICOは、顔を逸らしてそのまますたすたと行ってしまう。
 呆けたのように、暖かい春の風が触れていった自分の唇に指を当てる智宏。
勝田智宏「ノリコさん…ノリコさん!」

 しかしNORICOは、もう呼ばれても智宏の方を振り向くことは…なかった。

 ===============================
*ねいさん/森中廉太郎さんのご協力により作成しました。なおこのエピソード単体による評価値の加算はありません。

[487] 『暗黒の1つめ』第4の刺客は…!! 投稿者:阿僧祇 投稿日:03/05/17(Sat) 02:21

2003/05/08

 >夜、層雲境温泉のホテルの一室

一碧なつみ「はふ〜、海の幸に山の幸…お腹いっぱいです。(幸)」
綾瀬友美「(独り言)…まったく、ついさっきまで『智宏くんに会いたいよぅ〜』って泣いてたのに。」

 ここは温泉ホテルの一室。指定された場所に試合に行く前に、早めの夕食で腹ごしらえをした二人だった。

綾瀬友美「さて…それじゃ、お風呂に行きましょう。」
一碧なつみ「ここって、お風呂がたくさんありますよね。どのお風呂に行くんです?」
綾瀬友美「露天の岩風呂。」

 ふたりがやってきた露天風呂は、60坪以上の広さを岩と植木で埋め尽くした、ジャングルのようなお風呂だった。
 露天風呂とはいうものの、天井は一応あった。
 ところどころの岩場から滝のように湧き出したお湯が、ちょっとした川のようなスロープを流れて、点在する浴槽を巡っていく。
 脱衣所の説明では約60坪(120畳)ということだが、照明が弱くて薄暗い上に、植木と岩と湯気で見通しが利かないため、もっと広いように感じる。

一碧なつみ「広っろ〜〜〜…(汗)」
綾瀬友美「まるで迷路だわ。」

 バスタオルを巻いた二人は、植木の間を縫うようにスロープへ出た。
綾瀬友美「そうそう、この岩風呂は混浴だそうだから、万一男の人が入ってきてもいいように、タオルを離しちゃ駄目よ」
 そう。こういうところでは、うっかり油断してタオルを岩の上に置いたまま湯船で手足をのばしてぷかぷか浮いてたりすると、いきなり異性の中年集団がどやどやと現れて、非っ常〜に恥ずかしい思いをすることがあるのである。(涙)
一碧なつみ「ひえ〜〜〜…気を付けます。」
綾瀬友美「ま、これだけ暗くて障害物が多ければ、近くに来ないかぎりよく見えないと思うけどね。」

 岩に寄りかかって頭からお湯を浴びる一碧なつみ。(*湯気で体は見えません)
一碧なつみ「綾ねえさん、滝に打たれるの、気持ちいいですよ〜(はーと)」
 まるで天然の岩場のような浴槽で体を伸ばす綾瀬友美。(*湯気で体は見えません)
綾瀬友美「ふぅ〜…肩こりがとれるわ。」
一碧なつみ「四十肩ですか?」
綾瀬友美「う、うるさいわね。温泉は、肩こりや腰痛にも効くのよ!」
一碧なつみ「(無視してお湯浴び)ん〜〜〜〜〜♪」
 お湯の滝に飽きると、川の流れでスライダー。
一碧なつみ「やっほ〜〜〜、っ♪」
 どっっっぼーーーーん!(*もちろん水煙で顔しか見えません)
 …その隣で、頭からお湯を被ってしまった綾瀬さん。
綾瀬友美「コドモですか…あなたは。(汗)」
一碧なつみ「あら? お湯の中でも岩の間からお湯が湧き出してきた…熱っ」
綾瀬友美「滝で冷ましたり、湧きお湯で熱くしたりして調節してるのね。」
 浴槽の浅い部分で、ほとんど寝転がるような姿勢でくつろいでる二人。、
綾瀬友美「ふぅ。いいお湯…」
一碧なつみ「にゅふふ〜〜〜。来てよかったですね、綾ねえさん♪」
綾瀬友美「あの…(汗)…勝田くんが誘拐されて、よかったって言うの?」
 一瞬。一碧の背後に、青白い稲妻が走ったように見えた。
 次の瞬間、豪快な雷鳴…じゃなくて、一碧の号泣が響き渡る。
綾瀬友美「あ〜!わかった!わかったから! 泣かなくていいから、泣かないでよ!」
 あわててなだめる綾瀬友美。
一碧なつみ「だ、だって…智宏くん…智宏くん…会いたいよぅ〜…あ〜〜〜ん(泣)」
 涙なんだか汗なんだかお湯なんだかわからないものがぼたぼたと流れ落ちる。
 タオルで一碧の顔を拭こうとしてた綾瀬だが、そんなことしてもムダだと気がついてやめた。

 その瞬間、となりのもう少し深い浴槽に集まるライト!
 そしてBGMとともに、風呂場に備えつけられたカラオケのスピーカーから声が流れてきた。

BGM『♪銀の地平線〜 伝えてよこの想い〜…(「銀の地平線」"Nails"より)』
頭に包帯を巻いた覆面女の声「綾瀬友美! それに、おまけの一碧なつみ! よく来た!」

一碧なつみ「おまけじゃないっ!」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「じゃ、おばけの一碧なつみ!」

一碧なつみ「おばけでもない!」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「おのろけの一碧なつみ…」

一碧なつみ「…岩に縛り付けて、綾ねえさんと私の交替で1日中おのろけを聞かせてあげましょうか!?」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「そ、それだけは許してください(汗)。…えっと、気を取り直して。第4試合はここで行う。浴槽から出たらリングアウト…」

綾瀬友美「ちょ、ちょっと! もう始まるの!? こんな格好で!?

頭に包帯を巻いた覆面女の声「リンコス、着てきてないんですか?」

一碧なつみ「お風呂に入るんだから、全部脱いできちゃいましたよ(汗)」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「(しばらく、何やら話し合ってる声)…えーと。お客さんも水着よりバスタオルの方が萌えると思うので、そのままでいいです。ではタッグマッチ時間無制限一本勝負、…。」

綾瀬&一碧「よくねーーーっ!!」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「とにかく。対戦相手はもうスタンバってるんですから、プロならワガママ言わないで下さい。時間も押してるんですよ?」

綾瀬友美「わかったわよ! やればいいんだろ、やれば。」

 いいのか、綾瀬友美!?(汗)

 とにかく、体にバスタオルを巻きつけて浴槽から上がる2人。
 湯気の中に立つ二人のしなやかな筋肉を、白い水滴がつたわる。

頭に包帯を巻いた覆面女の声「では〜、ただいまから本日のメインイベント、タッグマッチ時間無制限一本勝負を開始します。まずは赤っコーナー…」
BGM『♪I was looking for some dreams くだらない優越感…(「CLIMAX」奥井雅美)』  

頭に包帯を巻いた覆面女の声「…DIA−JAPAN所属〜、綾瀬友〜美〜!」

綾瀬友美「いくぞっ!」
 タオルをバッと脱ぎ捨てる綾瀬。
 その直前、ビデオは大きくブレて暗転。

文字「しばらくお待ちください」

一碧なつみの声「だめですよ綾ねえさん! 上映禁止になっちゃいます!!」
綾瀬友美の声「う、う、う、…つい、いつもの癖で。ごめん…(幸弘(心の声))」

 ようやく画像が戻ると、すでにタオルを巻き直し、真っ赤になって頭を抱えてる綾瀬が。…というわけで、全く見れなかった。(ちっ…って、何が?(汗))

頭に包帯を巻いた覆面女の声「あの〜、綾瀬先生、コールを続けてもよろしいでしょうか?(汗)」

綾瀬友美の声「早く続けなさい!(怒ってごまかしてる)」

頭に包帯を巻いた覆面女の声「…え〜、ちょっとしたハプニングがありましたが、では続けさせていただきます。…え〜、おなじく、プロフェッショナルレスリングREAL所属、一碧なつ〜み〜!」

一碧なつみ「がんばりまーすっ!」
 タオルに気を付けながら、カメラに向かって手を振る一碧。

頭に包帯を巻いた覆面女の声「青コーナー、所属不明・正体不明、秘密結社・暗黒の1つめ〜、赤〜刺客〜!!」

BGM『♪二人がどれだけ 強いこだわり持って 世界が廻るのを 拒んでいたって…(「FREEDOM」globe)』  

 例によって狐目の覆面を付けた、赤い水着の刺客が岩の上に登場。
 そして両腕を広げてアピールすると、お湯に向かって華麗なダイビング…!
 …だが、水音とともに浴槽の底にゴツン! と衝突。 水死体の如く湯船に背中が浮いた。

一碧なつみ「あ、あの…大丈夫ですか? お風呂に頭から飛び込むなんて無茶ですよ、武田春花先輩…」
綾瀬友美「覆面レスラーの正体を詮索しちゃだめよ、なつみちゃん。(汗)」

黒刺客「まったく…思い付きで変なパフォーマンスするからどすえ。」
 こっちも覆面をつけ、黒い水着を着た刺客が浴槽の反対側の茂みに現れる。

頭に包帯を巻いた覆面女の声「おなじく、秘密結社・暗黒の1つめ〜、黒〜刺客〜!!」

綾瀬友美「あら、刺客は竹内さんでしたか、ご無沙汰してます。」
黒刺客「あ、これはご丁寧に…」
一碧なつみ「綾ねえさん、覆面レスラーの正体を詮索しちゃだめです。竹内さんもいちいち真面目に答えないでください!(汗)」

関口彩音「え〜と、レフリーはわたくしが務めっぺよ。」

綾瀬友美「あら? 関口さん、似合ってるじゃないですか、その水着。」
一碧なつみ「かわいい〜☆」
関口彩音「えへへ〜☆ リンコスは稽古着でからぁ、こんな時くらい可愛い水着で、智宏っちを悩殺…」
一碧なつみ「ん…?(汗)」
赤刺客「おまんら、世間話しとる場合か、コラ!#」
関口彩音「はっ、そうだった!!(汗) では〜、バッディングはだめだっぺ。サミングは反則。凶器は20カウントまで。タオルが取れっと恥ずかしーから、気ぃ付けて…」
 おもわず真剣な顔でタオルを固定し直すふたり。

関口彩音「では…ファィッ!」

 湯煙の中を、ゴングが響き渡る。

 まずは一碧と赤刺客がにらみ合う。
 おへその上まであるお湯の中、お互いに間合いを取りながら様子を見る両者。
一碧なつみ「う、動きにくい…」
赤刺客「ふふふ…水中では、はるか様に一日の長があるづら。」
 自分で正体をばらすなっつーの。。。(汗)
 とにかく赤刺客は、突如水中に身を沈めると、潜水泳ぎで一碧の下半身にタックル!
一碧なつみ「あっ…」
 バランスを崩した一碧が、水煙を上げて浴槽に倒れる。
 逆巻く波の中、水面に顔を出し入れしながら、両者の取っ組み合いが始まった。
 が、高校の時に平泳ぎで県2位まで行ったことのある武田と、水の苦手な一碧では勝負が見えてる。たちまち一碧は赤刺客に捕まり、水中でもがくだけに。

綾瀬友美「はっ!? なつみちゃんはカナヅチ!」
 ようやく気がついた綾瀬がお湯に飛び込む。
 息を止めて粘ってる赤刺客に、水中で蹴りを入れるが、お湯の抵抗で威力が弱い。
 赤刺客が手を放したから一碧は辛うじて湯船の外へ逃げ切れたものの、今度は綾瀬が足をとられてお湯の中で寝技が展開。
赤刺客「ふははははっ、寝技は基本的に有酸素運動! 水中では抑え込みで粘れんづら!」
 と言ったかどうか、お湯の中のことなのでわからないが、袈裟固めに入った綾瀬が息をつこうとしても赤刺客に抱き着かれ、しかもさらにくすぐり責めをうけてしまい、息が尽きても水面に上がれず、もがきまくってかえってグロッキーに。

 かくして両者、立ち上がって距離を捕り、はぁはぁと深呼吸。

綾瀬友美「げほっ、けほっ…まさか武田さんがここまでやるとは。」
一碧なつみ「まさに、森を得たサルですね。」
綾瀬友美「というより餌場を得たブタ。」
赤刺客「水を得たカッパ!!(汗) つーか、おまんら、覆面レスラーの正体ばらしちょし!!(涙) おら、カッパ! タッチだ!」
黒刺客「だ、だれがカッパや!(汗)」
 なんやかやで黒刺客に交替。

 黒刺客はお湯の中を流れるように綾瀬に近づく。
 が、綾瀬は不用意に飛び込んできた黒刺客を張り手の連撃で迎え撃つ。
 たまらず背を向けた黒刺客に飛びつくと、そのまま裏投げに…

一碧なつみ「はっ!? 綾ねえさん、スープレックスはダメ、下から見えちゃいます!!(悲鳴)」

 綾瀬の動きが一瞬止まる。
 この隙にしゃがみこんだ黒刺客、綾瀬を肩に抱えあげて、飛行機投げ!
 激しい水音がして水滴が飛び散り、お湯に波紋が広がった。

綾瀬友美「はぁ、はぁ、…お湯の中でよくそんなに動けますね…」
黒刺客「ふぅ、ふぅ、…信戦組で水中スパーリングもやらされたんどすわ。」

赤刺客「タケウチっ、とどめ、とどめ!」

 黒刺客が水上に飛び上がり、綾瀬に延髄斬りを叩き込む!
 ふたたびお湯に倒れる綾瀬。
 黒刺客がお湯の底で体固めに入る。

関口彩音「ぶくぶくぶく…1…ぶくぶく…2…ぶくぶく」

 ザブッ!
綾瀬&黒刺客&関口「ぶはっ!!」
 どうやら3人とも息が続かなかったようだ。

黒刺客「はぁ、はぁ、はぁ、」
綾瀬友美「はぁ、はぁ…」

 ふたたび流れるように綾瀬に近づく黒刺客。

綾瀬友美「!」
 ザバッ!

 綾瀬の足が水面に飛び出し、カウンターキックのような状態で黒刺客の腹部にめり込む。やってから、あわててタオルの下を抑える綾瀬。(*どっちにしても、水煙と湯気と影でやっぱり見えなかった)

綾瀬友美「…もうイヤっ!(涙+赤面)」

 お湯から顔を上げる黒刺客をそのままに、綾瀬はコーナーに下がって一碧と交替。

 一碧はタオルの止めを直してからお湯に入ると、黒刺客をつかまえてアームホイップ、続いてボディスラム。
 そして、必殺のビクトル投げ!
 カメラに激しく水滴がかかり、水面に波紋が立つ。
 ぷっかり、とバスタオルが浮いたが、暗い上に波と泡で水中の様子はよく見えない。
 どうやら水中で一碧が黒刺客に膝十字をかけて粘ってるようだ。

 赤刺客と綾瀬があわててアシスト、お湯に入る。
 赤刺客の手には北海道名産・新巻鮭!
 そして綾瀬友美の手には…お風呂の洗い場の椅子!!
 こんなところでも椅子にこだわるか!

 とにかく、新巻鮭と風呂の椅子でひっぱたきあいが始まった。

 そんなこんなのうちに、お風呂の底で息が尽きた黒刺客がギブアップ!!


  ▼時間無制限1本勝負
   綾瀬友美  | 時間計り忘れ | 赤刺客
  ○一碧なつみ |  膝十字固め  | 黒刺客●

黒刺客「はぁ、はぁ、はぁ…執念の勝利やな。負けたわ。」
赤刺客「次の刺客は、16日のDIAの興行でシングルって聞いてます。手紙は部屋の方にあとで届けます」
綾瀬友美「ありがとう。」
赤刺客「じゃ、あとは温泉を堪能してからいきましょうか。」
綾瀬友美「そうね、せっかくここまで来たんだし…って、ところでなつみちゃんは?」
 みんなが湯船を振り向けば…



一碧なつみ「…ぶくぶく、がぼがぼ(涙)」


竹内亜紀「す、すっぽんぽんで溺れてはる…」
綾瀬友美「まったく、世話の焼ける!!」

 タオルを手に救出に向かう一同。
 とうとう、最後まで見れませんでした。(何を?)

 =============================

*ねいさん、森中廉太郎さんのご協力により作成しました。なおこのエピソード単体やここに描かれてる試合による評価値の加算はありません。

[459] 翌、5月2日…(裏話) 投稿者:阿僧祇 投稿日:03/05/02(Fri) 06:51
(「暗黒の1め」の正体は、物語中では謎となっています。この物語はあくまで「G’Sの読者」としてお楽しみください。)

2003/5/2

 >都内北部、マンションの一室、夜

 W☆Rの、礼菜・NORICO・勝田妹の3人がシェアしてる、マンション型アパート。
 エプロンを着け、じゅわじゅわと揚げ物をしてる芋畠礼菜(アイダホポテト礼菜)。
 こちらもエプロンを着け、食器の用意をしてる勝田佐和子。頭にはまだ包帯。
 昆布茶を飲みながらゲーム『三国志[』をやってる清水政子と里見恵理。
 鉄アレイを弄んでる琴野修美と樋口アグネス。
 どこかに電話をかけてるが、なかなか繋がらない様子の平山絵美。

 扉が開いて、外出帰りの勝田智宏と、さりげなくおめかしした蕨沢憲子(THE NORICO)が入って来る。
勝田智宏「ただいま。」
THE NORICO「ただいまあ。」

清水政子「おかえり〜」
アイダホポテト礼菜「NORICOちゃん、お疲れ様。」
勝田佐和子「あっ、智にいちゃん、おかえりっ☆」
 かいがいしく荷物や上着を取ったり、椅子を用意したりする佐和子。
勝田佐和子「お風呂にする? お夕食? それとも…わ・た・し? きゃっ☆」
勝田智宏「…やめんか!!」
勝田佐和子「いや〜ん、みんなの前だからってそんなに照れなくても…実家では寝るのもお風呂も一緒だったじゃない☆」
勝田智宏「それは子供の頃の話だろうが!!」

 一同、こんな会話にもそろそろ慣れてきたようで、苦笑。

勝田智宏「だけど…佐和、こんなことして本当に綾瀬先生のためになるのか?」
勝田佐和子「なるよ。だって、綾瀬先生、このところ腑抜けてるんだもん。結婚してデレデレした挙げ句、腑抜けぶりに拍車がかかったらまずいでしょ。だから、敵を作って緊張感を持たせないと。」
勝田智宏「でも、こんな方法で…」
勝田佐和子「成瀬さんも『友美のためになるなら協力するよ』って言ってくれたしね。可愛い教え子を救うためなら綾瀬先生も必死になるでしょ。」
勝田智宏「だからって、僕の誘拐を演出するなんて…」
勝田佐和子「だってこうでもしないと、綾瀬先生は本気を出さないでしょう?」
勝田智宏「じゃあ、演出だけでいいじゃないか。何も僕をこんなとこに泊めたり、球団の練習場に行く時も見張りをつけたりすることないだろ?」
勝田佐和子「だめだめ。どんな些細なことから情報が漏れちゃうかわからないからね。智にいちゃんの所在を綾瀬先生に知られちゃったら、元も子もないんだから。」
勝田智宏「わかったよ。じゃ、せめてなつみちゃんにだけは電話させろよ。」
勝田佐和子「だ〜め。一碧先輩は綾瀬先生と同期でしょ? そういうとこから情報が漏れるんだよ。とにかく、16日までは我慢して。」
勝田智宏「ふぅ…心配してるだろうな。」
勝田佐和子「綾瀬先生は強いから、大丈夫だよ。」
勝田智宏「いや、綾瀬先生じゃなくて…」
勝田佐和子「みんなも! 智にいちゃんが勝手に誰かと連絡取ったりしないように見張っててね。そんなことするようなら、ふん縛って閉じ込めないといけなくなるから…」
勝田智宏「わかったわかった。おとなしくしてるよ。でも、外出に見張りがついてくるのはやめてほしい。」
勝田佐和子「なんで?」
勝田智宏「だって…(ちょっと汗)…なんかデートしてるみたいな雰囲気で気まずいじゃん。」
勝田佐和子「あら? NORICOさんじゃ気に入らなかった?」

 とつぜん、顔を曇らせ、拳を胸に当て、心配そうに智宏くんを見詰るNORICO。

勝田智宏「いっ、いや、そんなことは!(汗)」
THE NORICO「智宏くん…ふたりのあの甘くて熱い時間はいつわりだったのね…私、生涯に1人だけって決めてるのに…(涙)」
勝田佐和子「!? …智にいちゃん、NORICOさんといったいどこ行ったの?(睨みつけ)」
勝田智宏「お昼に一緒にお汁粉を食べただけで何を大袈裟な!! NORICOさん、あ、あの、あなたはアイドルみたいな雰囲気のひとだし、お喋りも楽しかったし、気に入らないなんてことはないですから。でも誤解を招くような発言は…」
THE NORICO「(ニコッ☆)そう、よかった!!(思わず腕に抱きつく)」
勝田智宏「あっ(汗)」
清水政子「よっ、ごりょ〜にん。」
アイダホポテト礼菜「ひゅ〜、ひゅ〜。」
 でも、さりげなく視線に嫉妬っぽいものが混ざってる。(笑)
勝田智宏「こ、困ります、NORICOさん。僕には心に決め…」
勝田佐和子「でもさー、智にいちゃんだってまんざらじゃないんじゃない? こういう状況って男の人は好きなんでしょ? 女子寮に泊まり込んでるようなものなんだし。」
勝田智宏「問題はそれなんだよ、佐和。せめて寝る場所くらい、なんとかならないのか? ソファーでもこたつでも床でもなんでもいいから…」
勝田佐和子「だめだよ、贅沢は。今はみんなここに泊まり込んでて、寝る場所が足りないんだから。」
勝田智宏「だからって、昨日みたいに佐和と一緒のベッドに寝るっていうのは…」
勝田佐和子「狭いのは我慢してよ。」
勝田智宏「狭いのは我慢できるよ。お前が寝ぼけて、僕の手を自分の服の中に入れたり、突然抱き着いてきて耳を舐めたりさえしなければ…。(汗)」
勝田佐和子「佐和のベッドが嫌なら、美月先輩かNORICOさんと一緒に寝る?」
勝田智宏「え?(赤)」
THE NORICO「え?(赤)」
 思わず顔を見合わせる二人。
勝田智宏「そ、それは迷惑だろ! ねえ、NORICOさん?」
THE NORICO「わ、私は…生涯に1人だけって決めてるから。智宏くん、セキニンとってくださいね?(赤)」
勝田智宏「…はい???(爆汗)」
THE NORICO「・・・・・(赤+下向いて壁にのの字)」

平山絵美「ねー、ちょっとちょっと! つかまんないよ、竹内先輩。携帯も電源切ってるみたい。」
勝田佐和子「ああ、そういや今日は信戦組の元社長さんの誕生日だから、武田先輩に誘われてごはんでもたかりに行ってるんじゃないかな?」
勝田智宏「くわしいな、お前…」
勝田佐和子「まあね。情報を制するものは世界を制するってゆーし。武田先輩をなんとかしないことには、私たちの誰も上に上がれない、いわば仇敵だからね。」
勝田智宏「・・・・・(心の声:いや、お兄ちゃんが心配なのはそっちじゃなくて…)」

アイダホポテト礼菜「佐和ちゃ〜ん、夕食できたわよ。テーブルの上、かたづけて。」
勝田佐和子「あっ、途中から全部まかせちゃってごめんなさい。さ、智にいちゃん、ごはんごはん。」
 みんながテキパキとごはんのしたく。
勝田佐和子「一度に4人づつまでしか食べられないから、智にいちゃん、早くすませちゃって。」

 食卓につく智宏、佐和子、NORICOの3人。

勝田智宏「とろろ汁、コロッケ、マッシュポテト、里芋の煮っころがし、ポテトサラダ、それにサツマイモの炊き込み御飯ですか…うん、おいしそう。」
THE NORICO「おいもばっかり…(汗)」
勝田智宏「芋は栄養があるんですよ。アメリカ大陸からジャガイモの栽培が伝わったことで、ドイツは人口が倍に増えたって聞いたことあります。」
アイダホポテト礼菜「うふふ、詳しいですね☆」
勝田佐和子「そんなことどうでもいいから! いっただっきま〜す!」
 ぱくぱく、もぐもぐ、と一同。
アイダホポテト礼菜「(おたまを口元に当てながら上目遣いで)…どうですか? 田舎風の味付けですけど、智宏君のお口に合いました?」
勝田智宏「あっ、すごく美味しいです。」
アイダホポテト礼菜「(にこっ)ありがとう、お世辞でも嬉しいです。」
勝田佐和子「お世辞じゃないですよ。家庭の味って感じで、なんか安心して食べられます。礼菜さんと結婚できる人がうらやましいですね。」
アイダホポテト礼菜「ま…(赤)」

 またも集まる嫉妬の視線。(笑)
 そんな雰囲気にぜんぜん気がついてない鈍い智宏君。

勝田佐和子「智にいちゃん、智にいちゃん! このとろろ汁、佐和が作ったんだよ。いっしょうけんめい、山芋をすって…」
勝田智宏「そうなの? 出汁が利いててなかなかいけるな。何を入れたの?」
勝田佐和子「かつをの出汁と、佐和の■液。」
勝田智宏&THE NORICO「ぶっ!(吹き出す)」
勝田佐和子「まちがい、まちがい、佐和の愛情。愛情が入ってるから美味しいんだよ。」
勝田智宏「まぎらわしい間違いをするなッ!!(汗)」

 そんなこんなで食事も終り。

勝田智宏「お手洗いお借りします。」
勝田佐和子「あっ、じゃ、琴野さんの当番ね。」

 お手洗いについてくる琴野修美。

勝田智宏「…あ、あの…扉を閉めちゃいけませんか?」
琴野修美「いちおう、見張りなので…(うっすらと赤面)」
勝田智宏「逃げたり外部と連絡取ったりしませんから、扉を閉めさせてください。」
 琴野、なんとなく残念そうに?(笑) 扉を閉める。
勝田智宏「ふぅ〜…いちいち頼まないと、落ち着いて用も足せない。」
 ふと、壁や扉に目が行く。
 そこには、基本技の分解写真、戦術の要点を描いた模式図などが所せましと。
勝田智宏「…そうか、佐和たちもプロだもんな。トイレの時間もイメージトレーニングに役立てたりとか、いろいろ工夫してるんだ…。」

 お手洗いから出ると
THE NORICO「智宏くん、今日は汗をかいたでしょう? 先にお風呂をつかっちゃってください。」
勝田智宏「いえ、昨日、一番風呂をいただきましたから、今日は皆さんから先に…」
アイダホポテト礼菜「だめよ、お風呂は男の人から入らないと。日本の習慣ですから。」
THE NORICO「というより、お客さんが先に使うのは当然ですよ。(汗) さ、後がつかえてます。」
勝田智宏「いえ、僕は後に…」
勝田佐和子「じゃ、礼菜さんやNORICOさんと一緒に入る?」
 ・・・・・・・沈黙。
アイダホポテト礼菜「と、と、年下の彼氏ってのも、ちょっといいかも?(赤)」
THE NORICO「わ、私は…生涯に1人だけって決めてますから、セキニン…(赤)」
勝田智宏「…失礼してお先にいただきます!」
アイダホポテト礼菜「あ、これタオル…あと、替えの下着です。(少し息荒っ(笑))」
勝田智宏「何から何まで、すみません。」
アイダホポテト礼菜「いえ、下着を買ってきたのは佐和子ちゃんですから。」
 智宏君はお風呂道具を手に出て行く。
 しばらくしてから
アイダホポテト礼菜「あら? しまった、お風呂って言えば、今…(汗)」

 今度は佐和子が脱衣所までついてきた。

勝田智宏「今度の見張りは佐和か。」
勝田佐和子「うん。逃げないようにね」
勝田智宏「逃げないから、外にいてくれ。…って、服を脱ぐなぁっ!」
勝田佐和子「なんで? お風呂に入るんだから、服は脱がないと…」
勝田智宏「一緒に入らなくていい!」
勝田佐和子「実家ではいつも一緒に入ってたじゃない(はーと)」
勝田智宏「子供のころの話だろ!!(汗) 今は一人で入りたいの! はやく服を着ろ!」
勝田佐和子「ちぇっ。」
勝田智宏「ちぇっ、じゃない!」
勝田佐和子「せっかく佐和が背中流してあげようと思ったのに。」
勝田智宏「いい、いい。佐和にも結婚相手ができたら流してあげなさい。」
勝田佐和子「(照れながら)やだなあ、智にいちゃんてば。佐和の結婚相手は智にいちゃんでしょ。約束したじゃない…もう。(真っ赤)」
勝田智宏「だから、子供のころの話だろっつーの! だいたいお前、まだ頭の怪我が治ってないんだから、普通にお風呂に入ったら危ないでしょうに!」

 などというやり取りの末、なんとか佐和子を追い出して、服を脱ぎ、風呂の扉を開けた智宏くんでしたが…

ワーウルフ美月「♪、♪、♪〜…」
勝田智宏「・・・・・・・。(汗)」

 お風呂場では頭を洗ってた西野美月(ワーウルフ美月)。
 もろに正面から凝視してしまった智宏くん。
 ふと、顔を上げた美月ちゃんと目が合ってしまい…

ワーウルフ美月「・・・・? !! きゃ…きゃ…きゃあぁあああぁぁぁあああぁっ!!(真っ赤)」
勝田智宏「ごっ、ごっ、ごめんなさいっ!! 見るつもりではっ!(真っ赤)」
ワーウルフ美月「閉めて! いいから、早く閉めて!!(涙+真っ赤)」
勝田智宏「あっ、ごめんなさい! (ガラッ、ぴしゃっ)」
ワーウルフ美月「中じゃなくてっ! 外に出て閉めてよ! お願い、外に、外にーっ!(泣絶叫)」
勝田智宏「ああっ、焦ってまちがえた! すみませんっ!!」
 慌てて風呂場を飛び出す智宏くん。
 中から低く響いてくる美月ちゃんの鳴咽の声に、思わず心臓がばくばく反応してしまうのでありました。

勝田智宏「僕…こんな環境で、半月も過ごせるんだろうか?(滝汗)」

 女の中に、男がひとり…満月の晩を待つまでもなく智宏くんは貞操の危機だ! どうするなつみちゃん!?(爆)

==================================

教訓:エロボケ(とくに「妹は思春期」ネタ)は控えめに。(汗)

[*このエピソードはねいさんの確認を得て掲載しました。]



 

[479] なお、このビデオテープは自動的に… 投稿者:阿僧祇 投稿日:03/05/14(Wed) 12:33
>  なお、このビデオテープは自動的に…


頭に包帯を巻いた覆面女(脅迫ビデオ)『…自動的には終了しないので、スイッチを切って見終わってください。』

 ネタがうまく入りきれず説明不足であったことに気がつきました、すみませんです(汗)

================================

 このエピソードでの評価値の加算は…つーか、あったらサギだな。(汗;

[485] ベレー帽の惨劇 投稿者:◆K 投稿日:03/05/17(Sat) 01:52
 それは、何でもない春の昼下がりの、よく見かけるような風景だった。
 「じゃっじゃ〜ん!」
 ロードワークから戻ってきたAQUAの前に、奈々緒が元気良く現れる。
 「……ちぇる、また遊んでるでしょ」
 あきれた様子のAQUAに構わず、奈々緒が見てみて、と無邪気に妙なポーズを決める。
 よく見ると、その頭の上には緑色のかわいらしいベレー帽が乗っていた。
 「あれ? その帽子、どうしたの?」
 見慣れない奈々緒のベレー帽姿に気がついたAQUAに対し、奈々緒が妙に自信満々な様子で返事する。
 「拾った」
 「拾ったって……」
 「道場へと行く途中の道端にある草むらに落ちてたんだ〜」
 何が楽しいのか、ベレー帽を被ってくるくるっ、と回っている奈々緒。
 「これであと眼鏡をかければ、続編での完ぺきなカメのアユミなんですよ、AQUAさん!」
 「は?」
 またワケの判らないことを言って、とAQUAがため息をつく。
 奈々緒が時々こういった固有名詞を言い出す時は、たいていゲームかアニメの話なのだとはわかっているのだが。
 「だからさ、ちょっと眼鏡貸して!」
 「イヤ」
 「ええ〜? いいじゃん、ちょっとだけ!」
 なんとかAQUAから眼鏡を奪おうと、奈々緒がAQUAに詰めよる。
 当然AQUAも抵抗したため、押した引いたの軽い立ちスパーリングっぽくなる。
 「良いではないか良いではないか〜」
 「良くない!」
 ドン。
 じゃれあうように揉みあった末、AQUAが奈々緒の身体を強引に突き飛ばすような形となる。
 「わわわっ!?」
 突き飛ばされた奈々緒があわててバランスを取る。
 その拍子に、頭に乗っていたベレー帽が転がり落ちた。
 「あっ!?」
 ころころ〜、と何故か転がったベレー帽が、下を走る道路へと落っこちてしまう。
 慌てて帽子が落ちたがけ下を見やる2人。
 運が悪いことに、昨日から今朝まで降っていた雨によって、未舗装の田舎道路には水たまりができており、見事にぽちゃん、とベレー帽は落ちてしまっていた。
 「あ〜あ、AQUAが突き飛ばすから」
 「何言ってるの、ちぇるのせいじゃない」
 「とりあえず、取りに行かないと」
 ごおおおおおお。
 奈々緒の言葉を遮るように、何故かその瞬間、大型トラックが道路を走りさる。
 「あっ」
 大型トラックに轢かれてしまったベレー帽は、見るも無残な様子になってしまっていた。
 「あ……」
 どろどろのボロボロになったベレー帽を、呆然と見つめる奈々緒とAQUA。
 「……とりあえずさ」
 「うん」
 「捨てるしかないよね」

 結局、取りに行って捨てる担当は、ジャンケンに敗れたAQUAの役目となった。
 「いってらっしゃ〜い」
 渋々下へと降りていったAQUA。
 その背中を見送った奈々緒が一息ついてから、道場へと戻ろうと歩きだす。
 と、その時。
 「クリスちゃん、見なかった!?」
 道場のほうから、凄いスピードで駆けてくるひとつの影。
 それは、2人にとっては年は下だけどひとつ先輩にあたる蒼樹玲奈だった。
 「ど、どうしたんですか? 玲奈さん」
 血相を変えた、物凄い表情で駆けてきた玲奈。
 「ボクの大切な、クリスちゃんが……、いなくなっちゃってっ……」
 膝に手を当ててうつむきながら、涙ぐむ玲奈。
 「わ、お、落ち着いてください! 急に名前だけ言われてもわからないですよ……」
 「うん……」
 なんだか暗い雰囲気になってきたので、奈々緒はとりあえず玲奈をなだめることにした。
 「そ、それで、クリスちゃんって、何なんですか?」
 あれ? そういえば、寮って動物を飼うのって禁止されているはずじゃ……と妙に冷静になる奈々緒。
 「丸くて、緑色で……」
 カメかな? それなら、バレずに飼うこともできるかな、とも思う。
 「大きさは、これくらいでっ……」
 まだ涙ぐんでいる玲奈が、両手でだいたい直径20〜30cmくらいの輪を作って必死に訴えかける。
 その雰囲気に、奈々緒も協力してあげなきゃ、という気持ちになっていく。
 「わかりました。私も一緒に探しますよ!」
 「本当? ありがとう!」
 「いやいや〜。困った時はお互いさまですって」
 「ありがとう……」
 奈々緒の協力表明を聞いて、玲奈がまたちょっと涙ぐむ。
 「わ、だ、だから落ち着いてくださいって。えっと、丸くて、緑色で……これくらいの大きさ、なんですよね」
 「うん」
 さっき玲奈が作った程度の大きさの輪を、奈々緒が自分の両手で改めて作る。
 あれ?
 「……意外と大きいカメなんですね」
 奈々緒がちょっと首をかしげてつぶやく。
 すると玲奈が、驚いたような表情で首をぶんぶん、と横に振る。
 「カメ? 違うよ! ベレー帽だよ!!」
 「……え? ベレー帽?」
 「そう! ボクがとっても大事にしていた、ベレー帽のクリスちゃん!」
 ……。
 極めて真剣な表情で奈々緒の目を見つめる玲奈。
 どうやら、ウソはついていないみたいだ。
 でも、ベレー帽にクリスちゃんなんて名前つけるかなあ、普通。
 ……あれ、待てよ。丸い、緑色の、ベレー帽?
 その時、奈々緒の頭に、昔いずみとかわした会話が急に思いだされてきた。
 ・
 ・
 ・
 それは、確かオーナーがベレー帽に萌えるとか言っていた、というネタから始まった話だった気がする。
 「でも、ベレー帽というと、なんか手塚治虫しか思い出せませんよね」
 「いずみちゃんも、確かにベレー帽が萌えというのは正直わからないですぅ。……そういえば、玲奈ちゃんがベレー帽大好きだったはずですぅ」
 「そうなんですか?」
 「それはもう、大好きというより、……溺愛ですぅ」
 「で、できあい?」
 聞きなれぬ単語に一瞬、はてなマークが奈々緒の頭をよぎる。
 「以前、玲奈ちゃんがベレー帽を落として、近所の野良犬にくわえられたことがあったんですぅ。……その時、玲奈ちゃん、本当は犬が苦手なのに、凄い勢いでその犬を追いかけたんですぅ」
 「そ、それで?」
 「それが、玲奈ちゃんがものすご〜い迫力だったんで、その犬が怯えてベレー帽をくわえたまま逃げ出したんですぅ。……それを玲奈ちゃんがまたいっそう怖い表情で追いかけて……」
 「はあ……」
 しだいに何か怪談でも話しているかのように、いずみの口調が抑えた怖いものへと変化していく。
「……結局、数km先のずっと遠くまで追いかけていって、最後はバテた犬を裏路地に追いつめてベレー帽を取り返したらしいですぅ。でも、ベレー帽は歯型がついた上、よだれでべちょべちょで……」
「ですよね……」
「……その後、その犬の姿を見かけることは、二度と無かったというですぅ……」
 最後にはいずみの話しぶりも、すっかり妙におどろおどろしい雰囲気となっていた。実際、いずみの様子が本気で怖がっている感じだったのを覚えている。
 ・
 ・
 ・
 はっ。
 「ま、まずい……」
 いずみから以前聞いた話を思いだした奈々緒は、事態の重大さにようやく気がつく。
 「どうしたの? ぼーっとしちゃって」
 「な、何でも無いですよ?」
 「でも、顔、真っ青だよ?」
 何とか我に返った奈々緒は、自分の全身に脂汗が流れ落ちていることに気がつく。
 「調子悪いなら、休んだほうがいいよ?」
 「だ、大丈夫ですよ! そ、それより玲奈さん、クリスちゃんを探しているんじゃ?」
 「そ、そうだった! クリスちゃん、どこ〜〜!!!」
 我に返った玲奈が、ふたたび道を駆け出していった。

 た、助かった……んだよね?
 奈々緒が心の中で安堵した、その瞬間。
 「ちぇる〜〜。ベレー帽、捨ててきたよ〜〜〜」
 なんということですかああああああああああぁぁぁぁぁ!!??
 慌てて声の方向を向く奈々緒。
 その視線の先には、もうかんべんしてよね、といったことをつぶやきながら戻ってくるAQUAと、その姿を見つめながら動かない、玲奈の背中があった。
 「あ、AQUAさん……ベ、ベレー帽、ステ、タッ、テ……?」
 「あっ、玲奈さん、おはようございます。はい。奈々緒がなんか拾ったとか言ってベレー帽持ってきたんですけど、誤って落としちゃってトラックに踏まれちゃって……それで捨て」
 「ドコニィィィィィィィィ!!」
 話を続けるAQUAに、加速装置が作動したごとくの速度で玲奈が詰め寄る。
 「ひいいいいい!?」
 ただならぬ玲奈の様子に、反射的に涙ぐむAQUA。
 「ド・コ・ニ・ス・テ・タァァァァァァァァ!?」
 「む、向こうの、ゴミ捨て……場に……」
 「ソッチカァァァァァ!?」
 涙ぐんで震えるAQUAを置いて、物凄いスピードで走りさる玲奈。
 「で、でも……」
 その先にある道路に、高速でゴミ収集車が走り去っていく姿が一瞬見え、すぐに消え去る。
 「ちょうど、収集に来ていて……」
 がくっ。
 腕を下げ、力無くひざまづく玲奈の背中が、AQUAの視線に入る。
 一瞬だったのか、それとも数秒だったか。
 玲奈の背中が小刻みに震えていた。
 「うわああああああああああああん!! クリスちゃああああああん!!!」
 「玲奈……さん……?」
 さらにAQUAから離れた後方にいた奈々緒にも、玲奈の慟哭とともに、行き場の無い悲しみが空気の震えを通して伝わってくる。
 「泣いている……背中が、泣いている……」
 思わずもらい泣きする奈々緒。
 しかし、その悲しみの波動は、すぐさま別のものへと変化する。
 クルリ。
 「ひっ……」
 振り返った玲奈を見るや、思わず息を飲み、腰から崩れ落ちるAQUA。
 のちに、AQUAはこの時の玲奈の様子について、次のように語っている。
 「私は確かに、見たんです。そこにいたのは、鬼でした。そう……近くにいるだけで身体中を刺し抜かれてしまうような憎悪のオーラを漂わせる玲奈さんの頭から、2本の角が生えているのを、私は確かに、見たんです……」
 「ナ……ナ……オ……」
 ゆらり、と空気を揺らしながら、暗黒のオーラを背負って一歩ずつ奈々緒のいる方へと歩みを進める。
 玲奈……いや、さっきまで玲奈だった、1匹の鬼が。
 「ご、ご………ごめんなさぁい〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 当然、その殺意の波動を向けられた奈々緒にはその恐怖に耐えきれるわけも無く。
 カクカク、と震えながらもAQUAがなんとか奈々緒のほうへと振り返った時には、すでにそこには彼女の姿はなく、ただ涙声で謝りながら逃げ去る声の残像が聞こえただけだった。
 そしてAQUAの横を一瞬で過ぎ去る、暗黒オーラの塊。
 あっという間に見えなくなった2つの影を、AQUAにはただただ見送るしかできなかった。

 数分後。
 道場近辺に、この世のものとは思えない悲鳴が響き渡ったという……。


 こののちDIA横浜道場では、ベレー帽を見かけたらすぐさま丁重にとりあつかい、玲奈の元へと奉る、という慣わしが生まれたとか生まれなかったとか。
 そんな、よくあるわけでもない、DIA横浜道場の日常風景だった。


 余談。
 この話を伝え聞いた、道場歴約1年にしてDIAでも数少ない常識人のひとりである笹渕慈はとある疑問を抱く。
 そんな彼女は、同じく数少ない常識人と言われ、蒼樹とは同期である星野真琴に聞いてみることにした。
 「あの、星野先輩」
 「なに?」
 「ベレー帽って、そんなに落としたり無くしたりするものなんでしょうか?」
 「あはは……玲奈って、ああ見えて普段はけっこううかつ者なんだよね」
 「そ、そうなんですか」
 「うん。昔はよく寝ぼけてあたしたちの部屋で先に寝てたりしたし、ロードワークのコースをよく間違ってとんでもないところまで走り続けてたりするし。それにさ……」
 だだだだっ。
 「まこちゃん、ひどいよ!」
 突如現れた玲奈のエルボーパットが星野の後頭部にクリーンヒット!!
 どさっ。
 「あの、モロに入りましたよ、せんぱ」
 「うわああああああん!!」
 呆然とする慈と、走り去る玲奈。
 そして慈の足下には、ただのしかばねと化した星野が転がっていたのだった。

[480] 「清美いじり!?」 投稿者:秋山(たに様確認済) 投稿日:03/05/15(Thu) 11:22
4月某日、KIZUNA道場前に1台のマイバッハ(注1)がとまる。
そこから帽子と眼鏡をかけた女性の運転手が降りて入り口に走る。
 九条清美はいつものように道場周りを掃除しているところにそこに来た運転手が声をかける。
運転手「失礼ですが九条麟さんですか?」
清美「はい、そうですぅ。」いつものようにしまりの無い笑顔で応対する。
−麟ったら、私が変装してることに全っ然気付いてないわねぇ。あははは。−運転手は心の中でくすっと笑う。
運転手「えっとですね、九条和観様からの依頼で迎えに上がったのですが…」
清美「はい〜?それはぁ聞いてないですぅ。」
運転手「和観様が待っていますので早くお願いします。」
清美「はうぅ、ええっとぉ。おろおろおろ…」
清美「あたふたあたふた…ですぅ。」
−くぅ〜、麟のヤツ!早くしやがれ!むぅ、仕方ない。手荒だがやむを得ん!−苛立つ運転手は神速のごとく動き…
「トス!」っと当て身を一発
清美「はうぅ、ぷるぷるぷる…きゅう。」強力な当て身で清美失神。
運転手は気絶した清美を軽々と担いで車の方へ…清美を車に乗せると運転手は早々と車を出す。
車を出してしばらくして目を覚ます清美
清美「こ、ここはぁ。車の中ですねぇ。ど、どこに行くのですかぁ?わたしぃ誘拐されちゃったんですねぇ。おろおろ」涙目になりながら運転手に問い掛ける。
運転手「お目覚めですか?麟様。」
清美「は、早く降ろして下さぁい!」
運転手「まあ、慌てないで…ふふふ。」
清美「な、何がおかしいんですかぁ?」
運転手「だってぇ、麟ったら全然気付かないんだもの…」
そう言いながら運転手は帽子と眼鏡を外す。
運転手「はろあ〜!」と後ろを振り向く。
清美「ああっ、お母さん。」
清美「どうしてぇこんなことするんですかぁ?」
和観「麟をプロデュースする為よ!お父さんが麟をプロレスして欲しくないって言ってるのよ。「辞めさせたい」ってね。」だから私が何とかしてあげる。麟は黙って私について来て!」
清美「ええ〜!」
車を飛ばし、都内某所のスタジオに到着。和観はそこでカメラマンとスタイリストと打合せ…
和観「どう、イ○ロー…やオ○カー…に所属してる女の子と引けを取らないでしょ?」
カメラマン「そうですね、幼い顔立ちに似合わない豊乳…このアンバランス加減が…」
スタイリスト「ええ、私もプロレスラーにしておくのが勿体無いと思いますわ。」
和観「で、話し早いけどちゃっちゃとやるわよ。」
スタッフ一同「はい!」
清美「ええ〜っ!!」
和観「麟、「俎板の上の鯉」という諺があるでしょう。人は覚悟を決めた時には冷静にならないといけない。それが例え死が待っていたとしても…さっ、これに着替えて。」と無茶苦茶な理論を言いながら和観は清美にビキニを手渡す。
清美「ええ〜っ、無茶苦茶ですよぉ〜。恥かしいですぅ。」
和観「つべこべゆーなぁ!さあ脱げ、とにかく脱げ!」
清美「はうぅぅ…しゅん。わかりましたぁ。」和観プロデューサーに威圧されてしぶしぶスタイリストとともに控室へ…
和観「でね、打合せ通りなんだけどあの子のトレードマークは「眼鏡」なの。それが上手く写るようにお願いね。」和観はその間カメラマンと入念な(?)打合せ…。
カメラマン「そうですか…でも、眼鏡をかけてるのは何か勿体無いような気がしますけど…」
和観「まあまあ、それはちょっとワケありでね…」としばらく話し込んでいると元女子プロレスラーのフレデリカ・ストールマンがスタジオへ…。
フレディ「はぁはぁ…和観さん。遅くなりました。」
和観「まあいい。それで計画通りいってるのか?」
フレディ「はい。DIAのオーナーT氏とは○○日に打合せの席を設けてあります。後はそこに行くだけです。」
−フレディじゃちょっと頼りないけど…まあ、蒔絵が動けない状況だとすれば彼女に頑張って貰うしかないし…−
フレディ「じゃ、私はまたちょっと打合せがありますので先に失礼します。」
和観「うん、頑張ってね。フレディ」
フレディは忙しいのか先に出て行ってしまった。
一方、清美とスタイリストがいる控室では
スタイリスト「可愛いですよ。それに迫力あるボディ…ええ。ほんと芸能界の人も結構みてますけど、その中でもスタイルはとても抜群ね。」
清美「あうぅ、ビキニってぇちょっと恥かしいですぅ。」
スタイリスト「ええ、こういうのは慣れですからね。最初はとても恥かしいですけど…やっていくうちにどんどんポーズとか取れるようになっていきますから。頑張ってください。」
清美「は、はいぃ。頑張りますぅ〜。」
この状況でも何故か頑張ってしまう天然ぶり…
スタイリスト「それと三つ編みをやめて髪を下ろしてみました。こちらの方がいいと思いましたからね。ちょっと色気があっていいですよ。」
清美「そうなんですかぁ。ありがとうございますぅ。」
それから程なくして…
スタイリスト「はい!出来ました。」
清美「わぁ、まるで別人のようですぅ〜。綺麗ですねぇ。」
姿見の鏡を見ながら一周する清美。少々満足な様子
スタイリスト「じゃ、行きましょうか?」
清美「はい〜。」
そう元気良く返事をしながらスタイリストさんとスタジオへ向かう。
スタジオでは撮影のスタッフが今か今かと準備して待っていた。
カメラマン「や、清美ちゃん。とっても綺麗だよ。」
和観「うん、見違えるような感じね。とってもいいわ、清美。」
スタッフ一同感心…。
清美「はうぅ、恥ずかしいですぅ。」
和観「うん、慣れよ。慣れ…じゃ、早いとこやっちゃいますか?」
カメラマン「はい!」
カメラマン「じゃ、清美ちゃん。始めるよ。」
清美「はい〜。」
立ちポーズでぐるっと一周…しながら撮影。それが済むとカメラマンから注文が入る
カメラマン「じゃあ、ちょっと四つん這いになってこっちに向いてくれるかな?」
清美が四つん這いになるとビキニからたわわな巨乳がより強調されるアングルになる。
カメラマン「いいねぇ、いいポーズだよ〜。」
清美「はうぅ。」とちょっと引きつっている
和観「清美!ポーズポーズ!」と檄を飛ばす
カメラマン「スマイル、スマイルだよ〜。清美ちゃん。」
清美「は、はいぃ〜(汗)」
カメラマンがどんどん写真を撮っていく。その途中で、
和観「ちょっと、タイム」
和観「こうしたらいいんじゃないかしら?」
和観は清美に眼鏡のフレームをくわえる様に指示
カメラマン「おお、これはいい!いいですよ和観さん。」
清美「ん〜〜、ん〜〜」(フレームを加えているので喋れない)
カメラマン「じゃ、清美ちゃん。またスマイルだよ!」
清美「ん〜。」
和観「なかなかフェティシズムな写真が撮れたわね。でも…パンチ力が足らないわ。ここはやっぱり…」
和観「ちょっと、清美!」また和観がポーズ指示…で、なんと!
和観「その眼鏡を胸に挟んで…」
さりげなくとんでもないことを言う和観
清美「え、ええ〜。それはぁちょっとぉ〜。」
和観「いいからやれ!さっさとやれ!とにかくやれ!」と鬼プロデューサーモード全開
清美「はうぅぅ…しゅん。わ、わかりました。」
清美がおずおずと胸に眼鏡を挟み込む。大きな胸にすっぽり収まってしまう眼鏡…おお、凄い。凄すぎです。
カメラマン「おお、凄い。これはキワどいですね。いいですよ〜清美ちゃん。」
清美「………」
和観「スマイルだ!」
清美「はうぅぅ」
カメラマン「まあまあ!はい、出来ました。今日はこれで終了です。どうもお疲れ様でした。清美ちゃん。」
清美「はい〜、ありがとうございましたぁ。」
和観「ふぅ〜、終わったわね。どう?出来具合は」
カメラマン「いいですよ。このまま、写真週刊誌に載せてもいけると思います。」
和観「そう、ありがと。で、期日には出来上がるかしら?」
カメラマン「ええ、大丈夫です。」
撮影が終わり、清美も控室で着替え…また、いつもの三つ編み清美に戻ってきた。
和観「じゃ、今日はこれで…またよろしく頼むわね!」
と言って清美とスタジオを後にする。
清美「きょ、今日はぁ・・・あ、あ、ありがとうございましたぁ。」ちょっとしどろもどろで挨拶する清美

スタジオの外に出て和観が清美に言う。
和観「で、今度○○日にDIAのオーナーT氏に会う事になってるの。プレゼンって言うのをやるんだけど…これが勝負よ!清美」
清美「え、ええ〜。」何がなんだか分からない
和観「当日はちょっと打ち合わせるから、清美もそのつもりで…じゃ、また道場の方に送ってくから。」
清美「は、はい〜。分かりましたぁ。」……本当に分かっているのか怪しい清美

鬼プロデューサー九条和観…彼女によってDIAで何が起こされるのか…つ・づ・く。



注1「マイバッハ」…ダイムラークライスラー社が誇る最高級車。5.5リッターV12ツインターボで550hpを叩き出すモンスターマシン。車内にはいたるところに豪華な設備があり、まさに最高級という言葉にふさわしい。日本円にして約4600万円はする破格の車。

[481] 「清美いじり」2 〜〜鬼プロデューサーのプレゼン〜〜 投稿者:秋山(たに様確認済) 投稿日:03/05/15(Thu) 11:24
四月○○日

九条和観は娘の清美を伴いDIA事務所の前に立っていた。
「それでぇ、やっぱりこの格好じゃないとぉ駄目なんですかぁ?」清美が和観に質問する。
和観「そう!この衣装があなたの生命線なのよ!そして、最終兵器であるその眼鏡…うん、決まりだわ!」とワケの分からない力説が始まって…
清美「はうぅぅ、お母さん。もういいですぅ。」
和観「あ…そう?」
和観「じゃ、私が先に部屋に入るから一寸そこに待っててね。」
清美「はい〜。」
事務所の扉をノックする和観
「失礼します。」
「どうぞ。」男性の方と女性の方の声がする。
扉を開けて中に入る和観
「え〜、オホン。本日はお忙しいところお時間を頂いて本当に有難うございます。フレデリカからご紹介があったと思いますが、わたくし九条清美の母親の九条和観です。よろしくお願いします。」といつもと違って礼儀正しい和観…
「はじめまして、オーナーのTです。」
「はじめまして、GMをしております香月です。」
とまずは普通に挨拶から…
「で、本日はですね。DIAさんに新商品の持ち込みということでお邪魔させていただきました。ええとこれが商品サンプルなのですが宜しいでしょうか?」と言いながらT氏と香月GMに九条清美トレカ(5枚組)を手渡す。
「こ、これは!」思わず唸るT氏
「はあ…」呆れ顔の香月GM
「ええ〜、新製品なんですよ。これをですねDIAのグッズコーナーの隅に置いて頂きたいんですが。」
「そ、それはねぇ。」T氏
「ちょっと困るわよ。いきなり」香月GM
「まあまあまあ!それでですね今日は特別ゲストを呼んじゃってるんです!ビバ、バニー!カマ〜ン!」いきなり鬼プロデューサーモード全開じゃないですか和観さん!で、後ろの扉を開けるとバニーさんが…しかも眼鏡っ子(爆)
「あ、あのぅ…」おずおずと入ってくるバニーの格好をした清美。いつものトレードマークの三つ編みはやめて髪をおろしている。眼鏡でよく分からないが若干メイクもしてあって色気も十分なようにチューンされているようだ。
「こら清美!しゃきっとしなさい。」
「は、はい〜。」
「ん〜、どうですか。結構なものでしょう?彼女に販促をさせます。ビキニとかバニーの格好で男性ファンを直撃ですね!」
T氏「しかし、彼女はKIZUNAファクトリー所属なのはご存知ですか?」
和観「はい、存じてます。ロイヤリティを掛けて、深沢統括とは既に交渉済みです。DIAが一番販路として適しているので今回お伺いしたのですよ。勿論原価計算ではこんな感じで」とバッグから書類を取り出してT氏に見せる
「ふ〜ん、どうしたものか?」
香月GM[ダメですよ。そんないきなりやっても・・・」
-ちぃ!押しが少し足らないか…でも。-和観が思案して清美に
「ちょっと、清美。あれを!」
清美「は、はい〜。」
清美「あのぅ、オーナーさん。お願いですぅ…私にぃやらせてぇくれますかぁ?」深く挨拶すると眼鏡がずれる…それで両手を胸の前で合わせた格好。哀願モードとしてはポイント高い。
香月GM「そんなこと言ったってダメよ。清美ちゃん。ね、オーナー?」
T氏「………OK…。」
香月GM「え、オーナー。今なんて?」
T氏「OKです。やらさせてもらいましょう。」
香月GM「オーナー!それはいくらなんでも…」と困惑する
T氏「良いです。責任は私が持ちますからどうぞ…」
和観・清美「有難うございます!オーナー」と二人で深々と頭を下げる。
和観「はい、早速取り掛からせていただきます。オーナー、本当に有難うございました。」
T氏「では和観さん、よろしくお願いします。」
香月GM「オーナー!ったく、もう。」
和観「では、私も準備がありますので今日はこれで…」
T氏「はい、どうもご苦労さまでした。」
和観と清美が退出した後でT氏は…
「眼鏡+バニー…凄いコンボだ…」とポツリ
香月GM「オーナー…後でちょっといいですか?」
T氏「あ、ああ。」
その後、T氏と香月GMとの間に何があったかは分からない。
一方、帰りの和観と清美は…
和観「よかったわねぇ。清美」
清美「はうぅ、緊張しましたぁ。」
和観「これが第一歩よ。これからもっと凄いことになるんだから…」
清美「も、もういいですぅ・・・」泣き顔になっている
和観「何か言った?」
清美「え、な、何も言ってないですぅ。」
和観「よし。じゃ、帰ろうか?」
清美「はい〜。」

鬼プロデューサー和観の活躍はどこまで行くのだろうか…。

[474] キッチンウォーズ 投稿者:TAKU 投稿日:03/05/11(Sun) 09:15


「‥‥で。これはどういうことなのかな?」
 KIZUNAファクトリー選手寮食堂内キッチン。
 どんがらがっしゃんっという、音がした後のような参上が目の前に広がっている。
 寸胴鍋やボウル、その他調理用の器具が散らばり、小麦粉が散乱し、さらには天井に卵が張り付いてたりする。
 そんななかで、小麦粉を頭から被った大塚雪緒、津上美紗のふたりが縮こまっていた。
 そんなふたりの前で、高村あかねさんが腕を組みながら、静かに立っている。
 いつもと変わらぬトーンで、静かな問いかけがものすごく怖い。
「これは、美紗が‥‥」
「うにゅう‥‥。小麦粉散らかしたのは雪緒ちゃんで、卵はわたしですけど‥‥」
 口々に言い出す雪緒と美紗。
 KIZUNAにおいて、基本的にキッチンは高村あかねの聖域である。
 祖父が銀座の一等地にある有名日本料理店の料理長で父親が現在その2代目。叔父さんが浅草で人気の洋食屋をやっている料理一家に育ったあかねは、KIZUNA道場でも料理番としてその腕を振るっている。調理師免許までちゃんと持っているほとんどプロに等しいあかねの作る料理は、絶品と呼ばれている。KIZUNAに練習に来た他団体レスラーのほとんどが、練習後に振る舞われる食事に、驚きの声を上げる。
 DIAの料理番である星野真琴が練習後のごはんを一口食べて、その場で弟子入り志願したというのは有名な話である。
 得意料理はなんでもありだが、叔父の影響で洋食系に自信あり。ヒマを見ては作り足し、すでに3年ものとなっている叔父直伝の本格デミグラスソースで作るビーフシチュー、ハヤシライスに煮込みハンバーグ、そしてロールキャベツは老舗の洋食屋クラスの深みとコクがあり、選手、スタッフにも大人気のメニューだ。カレー用のガラムマサラなどのスパイスも自分でオリジナルブレンドしたものを用意している。また、そのコネを利用して、格安でいい材料の仕入れまでしており、KIZUNA選手寮の食堂メニューは他団体レスラーの間でも1度は食べたいと言わしめている。
 そのほかにもなにかあれば作っているお菓子作りなど、そのレパートリーは幅広い。 
 現在、主戦場をWWPLに移し、西日本遠征が多いあかねの代わりにキッチンに立つことが許されているのは、飲食店でのアルバイト経験が豊富で、標準以上に料理ができる坂倉宏子と、SPWAでレスラーに専念するまで、カナダでハート一家が経営しているレストランで厨房に立っていたメリッサ・スティンボートの二人だった。
 ちょっとしたつまみ食いなどは黙認されているが、さすがにここまで来ると黙って許されるとは思えない。
「誰が悪いとか、そんなこと言う前に言うことはないの?」
 普段、めったに怒らないあかねだが、どうも今日は怒っているらしい。
 その静かだが圧倒的な迫力に、平身低頭で謝りだす。
 口々にしゃべる内容を統合すると、どうやら練習後に軽くお腹がすいたため、ふたりでホットケーキを焼こうとしたらしいのだ。
 しかし、結果は無残。
 なにやら不穏な雰囲気にキッチンを覗いたあかねの目の前では、小麦粉まみれになった雪緒と美紗が必死になって証拠隠滅を謀り、ドツボにはまっていたというわけだ。ちなみに、舞っている大量の小麦粉のおかげであかねが夕食のテールスープ用に仕込んでいた牛骨スープは大なしになっていた。
「あのね。なにか作って食べようとしたのは別にいいの。隠そうとするその根性がダメ。散らかしたなら散らかしたでちゃんと謝んなきゃダメだよ。それに、作れないならあかねに言えばいいんだよ。ホットケーキくらいならすぐ焼いてあげるから」
 これが荒谷久美なら、ゲンコツが飛んでくるところなのだが、あかねの場合はお説教ですんでいるので、ふたりとも少しほっとしていた。
「‥‥とりあえず、片付けないとなんにもできないね」
 キッチンを見まわしながら、あかねから思わずため息が漏れる。
 そこであかねの指示のもと、みんなでお片付けが始まる。
 散らばった調理器具を雪緒が拾い集め、美紗がシンクで洗う。その間に、あかねが散乱した玉子の殻や小麦粉などを片付ける。
 小1時間ほどで、なんとかキッチンが元通りになった。
 ただでさえお腹がすいていた雪緒と美紗が、空腹で目を回しそうになる。
「おなかすいた‥‥」
「すいたっす‥‥」
 夕ご飯まで待つには、かなり辛い状況だ。
「しょうがないなあ。割っちゃった卵もいっぱいあるし、ちょっと待っててね」
 それを見たあかねが苦笑を浮かべると、シルバーのボウルのなかに割られている卵をカシャカシャと混ぜ始める。
「黄身が割れてなかったらシフォンケーキにできたんだけどね」
 重くない間食用に、あかねはシフォンケーキをよく焼いている。
 黄身、小麦粉などを混ぜた生地に、白身を角が立つまであわ立てたメレンゲをさっくりと混ぜ合わせてふわっと焼き上げるシフォンケーキは、腹持ちもよく練習後の選手たちのおやつとして喜ばれているメニューだ。
「リクエスト通りにホットケーキ焼いたげるから、少し待っててね」
 約12個ほどの卵を混ぜ合わせ、半分を別のボウルに移す。
 残りの卵に、小麦粉とベーキングパウダー、砂糖、牛乳、溶かしバターを入れ、ホットケーキの生地を作る。
 フライパンでホットケーキを焼いている間に、別のボウルに移した残り半分の卵に塩をひとつまみと生クリームを大さじ1杯、さらに大さじ2杯の砂糖を加え、あかねがシャカシャカと泡立てはじめる。
 1分、2分、3分‥‥。
 はじめはホットケーキに目が行っていたふたりだったが、いつまでたっても泡立てるのをやめないあかねに視線が移る。
「あの、まだ泡立てるんすか?」
 ハテナマークを浮かべながら、美紗が聞く。
「ん? そだよ」
 あかねはそう言うと、さらにボウルの中身を泡立て始める。
「機械でばーっとやっちゃえばいいのに」
 当然の質問を雪緒がする。
「あはは。機械でやるのも楽で良いんだけどさ。今、作ってるのは自分でやったほうが美味しいものができるんだな」
 焼きあがったホットケーキをパン皿に移し、もう一枚用意したフライパンを熱くする。
 あったまったフライパンにバターをひとかけら落とし、焦げつかないようにフライパン全体になじませる。そして、ピンと高く角が立つまほど、固く泡立てられた卵液をヘラでさっくりとすくい取り、フライパンに流し込む。
 焦げないように注意しながら弱火で焼き始める。片面に軽く焼き色がつくと、オムレツのように半分にまとめてじっくりと熱を加えて、できあがり。
 できあがったオムレツもどきを、ホットケーキと一緒の皿に盛り付ける。
「ハイ、出来あがり」
「わーい!」
「いっただきまーす!!」
 食堂のテーブルに座って、特製のメイプルシロップとバター、あかね手作りのイチゴジャム、ホイップクリームと一緒に、雪緒と美紗がアツアツのホットケーキを頬張る。
 ニコニコしながらホットケーキを食べているふたりに、オレンジジュースをあかねが持って来る。
 そして、注目のオムレツもどきにスプーンを入れる。
 ふわふわの食感とほどよい甘さが口いっぱいに広がり、スフレのように一瞬で口のなかでとけていく。
「うわあっ、これ美味しいっす!!」
「ホント! すっごい美味しい!! これなに?」
 目をまん丸にしながら、驚くふたり。
「スフレオムレツ。お砂糖入れて甘くしてあるから、お菓子みたいな感じでしょ?」
 オムレツなのにオムレツじゃない食感にきゃいきゃい騒ぎながら、食べ続ける。
「卵がこんなにふんわりするなんて、びっくりっす!!」
「卵焼きじゃないみたい!!」
「美味しいでしょ? メレンゲ作るみたいにして、卵を泡立てて作るデザートオムレツなんだけどね。空気をいっぱい入れてふわふわにして焼くと、スフレみたいな感じですっごく美味しいの。泡立て方にちょっとだけコツがいるんだけど」
 そう言って軽くウィンクする、あかね。
 美味しい美味しいとあっという間に平らげるが、まだまだ足りないようで、ふたりともカラになったお皿を眺めている。
「まだおなかすいてるの? ま、食べるのはレスラーの仕事だからね。生地はまだあるから、も少し焼いたげるよ。‥‥そだ、きよちゃん(九条清美)もそろそろDIAから帰ってるころだから、呼んできて。おやつあるよって」
「はーい!」
 美紗がとてててて、と駆けて行く。
 それを見送りながら、キッチンへと戻っていくあかね。
 追加のホットケーキとスフレオムレツを焼く準備しながら、あかねはダメになったスープのかわりに、今夜の夕食になにをつくろうかと思案していた。
 ちなみにこの日のスフレオムレツは、あかねの裏メニューとして、ぜひ食べたいと大勢からお願いされることとなる。

[473] 【機動天使】 投稿者:野獣神父 投稿日:03/05/10(Sat) 15:59
 セリアエンジェル。『天使』の名を持つ女子レスラーの一人。
しかしこれまで『天使』らしい行動はしたとこがない。

腰まである長い金髪、ちょっとは大人びた(と本人は思っている)美少女系のフェイス。88のバストと野性的なプロポーション?
自分が一番『天使』らしい『天使』だと思う…ケド、【飛んだ】事はない。
【飛び】主体のレスラーと被る。それが嫌だったし、
持って生まれたナチュラルなパワーと、スタミナ、頑丈さが【ブルファイト】向きだった。

でも、〜でもそれだけじゃつまらないとこの頃感じる。
【エンジェルドライバー】のセリアと呼ばれるのはいい…だけど〜
リングの『制空権』を無条件にあげちゃうのはどうだろ?って思う。
今まではそうしてきた。〜そんな事をしなくても、私を魅せられるって。

愛沢美奈子という存在が私にそう思わせる。
初めて名前を聞いた時は、興味がなかった。〜その後【東女事件】の時も『つまんなそう』って思ったから気にしなかった。
今はどうだろう?〜【3/23の対戦】後・…友達になりたいって思ってる。
試合後のコメントを後で聞いて・・・・・ちょっとムカツイた(笑)
セリア「噛み合わないってゆーのはどういう意味?」
まぁ〜後で思えばそうだろうけど?

セリア「〜とまぁ…そーゆー理由もあって、今度、みぃちゃん(愛沢美奈子の事、本人には了承とって無し)とバトる時の為にこっちも【今まで】とは違うの見せ付けてやりたいって思ってね?」

現在・…【真・必殺技】の練習中。
考案した《ハルバード》〜良い技だけどなんかしっくりこない。
今の【飛び技】の仮想敵はみぃちゃん>蹴りに蹴りじゃ芸がなさすぎ(笑)
もっとセリアちゃんらしい【天使】の表現方法はないものかな?

う〜ん…寝ッ転がりながら考え中。
うう〜ん・……お風呂に口まで浸かりながら考え中。
ううう〜ん・…お風呂あがりに素っ裸でアニメ見ながら考え中。

『!』
某・喧嘩っぱやい主人公が『必殺技』を放つシーンを見てたとき…
セリア「これだわ!(笑)」

でリングの中央に練習用人形を置いて・・セリアは軽いステップとテンポのよい歌を口ずさみつつ間合いをとって対峙する。
セリア「まぁ〜本当ならロープに振るんだけど……それは省略して?」
『ok?じゃ…行くよ!』
相手をロープに振った(つもり)でセリアもロープに向って走り、反転!
 『衝撃の〜は、ちょいパクりだし・…』
【エンジェリックぅ〜クロス・インパクト!】
飛びこむように首にラリアートが当る!
確かな手応え!と共に人形が後ろに倒れる。
セリア「え゛?」
それに押される形でさらに吹っ飛ぶセリア。〜相手に当れば慣性がかかってスピードが緩まると思っていたが?
セリア「にゃ!」
見事にヘッドスライディングでキャンパスに顔面を擦るセリア。
「いてて〜」
つっ伏した顔をあげ、赤くなった鼻を摩りながら涙目のセリア
「この技『性能』はいいけど…・・着地とか難点があるから奥の手にしとこっと〜」
他の『天使』たちとは違う『天使』らしさを考案したセリア。
これからこの【必殺技】とともに新たなセリアエンジェルとなってセリアらしい【プロレス】を表現していくことだろう?

セリア「【これから・・どうするかって?〜決まってるじゃない?【新たな必殺技】でみぃちゃんをあっと言わせてあげるから……ね♪」
十字にかっ切ってぇ〜【エンジェリッククロスインパクト】!!」

[472] 飛翔天使のお悩み 投稿者:TAKU 投稿日:03/05/09(Fri) 12:14
「はぁ〜〜〜〜〜〜」
 KIZUNAファクトリー寮内のレクレーションルーム。
 選手同士の交流の場として開放されている20畳ほどの広さのこの部屋で、津上美紗さんはひとりため息をついていた。
 TMLLライト級ベルトを取ってから、美紗はなにかに悩むようになり、皆が心配していた。
「美紗ちゃん、お茶にしませんか?」
 イギリス式のティーセットを持って現れた天野真琴が美紗に声をかける。
 イギリスから帰ってきてからてんてこ舞いな生活をしていた天野だったが、今日は久しぶりの完全オフ日で朝からビデオを見たりとヒマをもてあましつつあったのだ。
 高村あかねに作ってもらったスコーンと一緒に、アイスミルクティーでお茶会を開く、天野と美紗。
 ホイップクリームとイチゴジャムを沿えたスコーンに舌鼓を打ちながら、アイスミルクティーを一口。
 なんともまったりとした時間が流れるレクレーションルーム。
 そこに高村と中原千早希のふたりが姿を現す。
「あ、お茶会してる」
「美味しそうですね」
「あ、一緒にどうですか? たくさんありますから」
 中原と高村も加わり、さっきとはうってかわっておしゃべりタイムとなる。
「注文通りに作ったはずだけど、どう、スコーンの味は」
「とっても美味しいです」
「これ、あかねさんが作ったんですか?」
 滅多にスコーンなど食べない千早希が驚きの声を上げる。
 しばらく楽しい時間が過ぎ、思い出したように天野が美紗にたずねる。
「ところで、美紗ちゃん。さっきからため息ついてどうしたんですか?」
 みんなでおしゃべりしているなかで、ため息をついている美紗。
 高村も中原も気にはなっていたのだ。
「そうだよね。最近、元気ないし。どうしたの?」
「元気ないわけじゃないっすけど‥‥」
 高村の問いかけに、ぼそぼそとつぶやき始める美紗。
「なにか悩みでもあるの? 美紗らしくない。それに、そういう態度はあかねさんや天野さんに失礼だろ」
 熱血体育会系の中原が美紗の態度に少しお説教を始める。
「あ、ごめんなさい。そんなつもりじゃないっすけど‥‥」
 いつもは明るい美紗が、真面目に落ち込んでいるようだ。
「なに? 珍しくまーちゃんもいるんだから、悩み事あるんなら言ってみたら?」
「あの、わたしってもう上げてもらえる団体がなくなるんじゃないかって思って‥‥」
 深刻な悩みを打ち明け始める美紗。
 現在、美紗の主戦場はWWPLにREALの2団体。
 もしかしたら、自分は必要ないのでは? そんな疑問が、美紗のなかで大きくなっていったらしいのだ。
「みんな、すごいじゃないっすか。柊さんとか香取さんとかほんとすごいっすから。MARINAちゃんもそうだし、この間デビューしたメイガスさんの飛び技とかすごいなあって。それに、REALの長澤さん、佐藤さん、福永さん、Erikaさんに、DIAでも巫さんとか幸さんに、槇原さんとかみんなすごいっすよ。あと、アンバランスさんも」
 ずらずら〜っと自分の同期に当たる選手の名前を上げだす美紗。
「今、美紗がすごいすごいって名前上げたのに聞くと、皆が皆、美紗のことをすごいすごいって言うと思うけどね」
 思わず本音が漏れる中原。
 美紗についてはマスコミ、他団体どこでもすごいと言われる。
 確かに、新人である以上、試合運びや一発の威力などまだまだ未熟な面がある。しかし、それを補って余りある身体能力の高さと才能を美紗は持っていた。
 KIZUNAファクトリーのなかでも、美紗のポテンシャルの高さは群を抜いているのは事実。美紗の美しいムーンサルトを見て、あまりの不恰好さに、中原はムーンサルトプレスの使用を自粛したほどだ。試合形式のスパーリングでも、序盤から美紗の軽やかな動きについて行ける選手はKIZUNA内にはいない。
 空を舞い、飛ぶ。跳ねるではなく飛ぶ、という表現が美紗の動きには使われる。
 跳躍ではなく飛翔。四次元殺法を越える無重力殺法と。
 ついた異名が『飛翔天使』。
 天使キャラが多い女子プロレス界において、現在、天使モチーフを自分のものにすることは難しい。
 それを成し遂げただけでも、立派ではあるのだが‥‥。
「美紗がなに悩んでるか、あかねには見えないんだけど‥‥」
 高村が、つぶやくように言う。
「だって、WWPLにもREALにも、わたしは上げてもらってるんすから。その団体にわたしと同じような人がいたら、わたしなんていらないすから‥‥」
 どうやら美紗の悩みはその辺りにあるようだった。
 選手の派遣を主な業務にしているKIZUNA選手のプロ意識と危機意識は高い。なにも考えていないように見える大塚雪緒、九条清美ですら自分を活かす方法を常に模索している。
 なにか特色を持っているオンリーワンでなければ、団体内で事足りるのであれば、その選手は必要がないからだ。
「美紗ちゃんは今、そう思ってるんですか?」
「わたしってホント、ダメダメだなあって。最近、思うっスから‥‥。メイガスさんのデビュー戦とか、この間のレイさんの試合とか見てたら‥‥」
「まあ、そうやって意識して悩んでるだけマシか」
 高村がミルクティーを飲みながら言う。
 その言葉に中原も同意する。
「そうですよね。これで『じゃあ、がんばるっす〜』とか言って、今まで以上にポンポン難易度の高い飛び技しだしたら、多分、謹慎だと思いますし」
 安易な大技の乱発は、KIZUNA道場では厳禁である。
 大技の使用が中心の美紗にしても、南から解禁のOKが出された技以外の使用は禁止となっている。
 そのため、最大の大技を3つ、今も美紗は披露していないのだが‥‥。
「悩むのはいいけど、あんまり他のレスラーのことは気にしないほうがいいってあかねは思うけど。同じような技使ったって美紗は美紗なんだし」
「そうすっか?」
「わたしもそう思います。美紗ちゃんは技じゃなくてちゃんと動きでオリジナリティを出してますよ。WWPL勢のルチャともREAL、DIAのジャパニーズスタイルとも違う、オリジナル空中殺法ですから。南さんはそこまで考えて美紗ちゃんのこと指導してます」
 天野も、力強くそう剥げます。
「もっともっとがんばらないとだめっすね‥‥、わたし」
「悩むんなら練習したら? 流した汗はウソつかない。流したぶんだけ、なにかは身についてるからさ」
 中原お得意のフレーズも飛びだす。
 そこに、南が姿を見せた。
 レクレーションルームに入るやいなや、美紗に声をかける。
「美紗‥‥、ああ、みんないたのね。ちょうどよかったわ。みんな道場に集合。美紗と中原で試合するから」
「はい?」
「美紗と今から試合ですかあ?」
「わ、わたしと中原さんで?」
 高村、中原、美紗が素っ頓狂な声を上げる。
 なにか考えがあるのか、南の顔も真剣だ。
「いいから。すぐに用意して。アップも忘れずに」

 それから30分後。
 練習用のスパッツにTシャツという格好ながら、中原と美紗が道場のリングに向かい合って立っていた。
 レガースもちゃんと身につけている中原は完全に戦闘モードに入っている。
 レフェリーは天野。南、荒谷、高村の見守る中、ゴングが鳴らされた。
 どうしていいかわからず困惑している美紗に、中原の強烈なミドルキックが叩き込まれる。
「どうした! リングでよそ見してたらケガするって、教わったろ!!」
 ロー、ミドルと上下に打ち分けて、美紗の足を殺しにかかる中原。
 そのキックのすべては本気の一撃だった。
「い、いたたっ‥‥」
 ローキックの連打に、顔をしかめながら美紗が中原のキックの間合いから離れる。
 その一瞬の間をついて、その場飛びのドロップキックを中原の顔面に入れる。
 そこから、素早い動きの応酬が始まる。
 一発、一発はまだ軽いとはいえ、空を舞うかのような美紗の動きに中原は追いつくことができない。
 ロープワークで向かってきたところをボディへのミドルキックで迎撃しようとする中原。
 そのキックを飛び込み前転のように回転して避けると、背中から中原に飛び付いて、後方回転エビ固めから背中をついて中原をフォールするヨーロピアンクラッチへと移行する。
 固められた中原が気合一閃、体重の軽い美紗の身体を跳ね飛ばし、カウント1でクリア。
 中原が起き上がる前にロープに飛んだ美紗が、フライング・フォアアーム(ジャンピングエルボー)で突っ込んで行く。
 その、体重とスピードの乗った一撃にもんどりうって倒れる中原。
 倒れると同時に、コーナートップに飛び乗った美紗がムーンサルトプレスを放つ。
 プレスされる前に中原がリングを転がって避ける。
 中原が避けたことに気づいた美紗が、そのまま両足でリングに立った。
 その瞬間、中原のジャンピングハイキックがサイドから巻きつくように、美紗に叩き込まれる。
 美紗ダウン!!
 天野のカウントが進む中、頭を振りながらカウント8まで休んでから立ちあがる美紗。
「美紗、ロープワークでの制限を解いて。あとスクールボーイバリエーション、それにスーサイドボムを使っていいわ。中原に思いっきりぶつかってみなさい」
 その言葉に、目を見張って驚く美紗。
「い、いいんすか? ダメって言われてたのに‥‥」
「私がいいと言っているの」
 南が凛と言い切る。
「は、はいっス!!」
 返事と同時に美紗が走りだす。
 ロープに駆け上り、そのスプリング効果を活かして中原に向かってドロップキックを放つ。
 縦、横、そしてロープを使った斜めへの空中移動で、縦横無尽にリング内を舞い始める美紗。さすがにここまでの動きになると中原も追いかけるどころか、待ち構えるしか手がなくなる。
 そんなリング上を見ながら、高村が荒谷に話しかける。
「ねえ、久美ちゃん。スーサイドボムってさ、前に久美ちゃんと練習してた技だよね‥‥」
「あの背中からファイアーバードで飛んで、背中からプレスする技でしょ。あれ見てから私、自分のムーンサルトプレスに自信無くなりそうになったのよね」
「あかねも同じ。ムーンサルトとスワントーンボムとファイナルへブン(2回転半セントーン)足したような技で、さらに難易度高いんだよ。あれできるの美紗しかいないんだから。多分、飛び技得意って言ってるメイガスちゃん、清水ちゃんのWWPL勢でもムリだね。稲葉ちゃんに話したら、笑われたもん。端っから信じてくれなかったし」
「でしょうね。目の前で見ても信じられなかったんだから」
 リング上では、美紗が中原にロープワークからドロップキックを連発するが、今や上位グループに位置する中原の牙城を崩すには至らない。
 中原の強烈なキック一発で、美紗の動きも止まってしまう。
 それでも美紗は自分の命である、スピードでかく乱しようとする。
 が、中原もそれを読